気のせいです

クリニックでの診療では、場合によって、いろいろと患者さんの気持ちに踏み込んだ言葉をおかけすることもあります。

東洋医学の思想では「心身一如」が前提ですから、身体の不調も心の不調も、まるっと一緒くたに取り扱っています。

いらっしゃった方には「先生の診療、心療内科みたいですね」と言って頂いたこともありました。

心療内科、って、精神科の、少し敷居が低くなったところ、という認識のことも多いと思います。もともとは心身医学、というジャンルを立ち上げようとされた方が銘打った診療スタイルだったようです。九州大学の心療内科は、「心身医学」というものを真面目に追いかけた方(初代教授は池見酉次郎氏。『心療内科』などの著作があります)が立ち上げたようで、いわゆる精神科とは趣が異なります。どちらかというと、臨床心理士が用いるような技法をお使いになっている、という印象があります。

身体に出てくる不調が、心の問題から来ている場合、その源流を遡るのは、わりと大変な作業になりがちだったりしますが、身体から心の状態が読み取れるのであれば、そこまで解明が難しくもない…ということだってあります。

わたしのクリニックでの臨床では、心の問題は、まず「気」に変調が出てくる、と考えます。そして、その気の変調が、体調の不良に繋がることがあるわけです。
ですので、「それは気のせいです」っていう話になります。

普通「それは気のせいです」って言うと、実態としては何もありません、というような表現になります。つまり「なんらかの(あるいはあなたの)勘違いではないですか?」というメッセージになります。不調そのものも、あなたが気にしすぎているから…実際にはそもそも不調も無いはずなのに…みたいな意味になりそうです。

漢方の診療では、「気」が大事です。この「気」のせいで、身体に不調が出ている、となれば、それはしっかり異常ですし、ちゃんと治療しましょう、という話になります。

ですので、しばしば「それは気のせいです」って説明します。根拠も実態もある、「気」の不調のせいです、という意味です。

そして、「気」を整えたら、それなりに体調も上向きになります。

何か不調があって、お困りの方。しかも病院や診療所で「異常はありません」とか、だから「気のせいでしょう」というようなことを言われた方、ひょっとすると、本当に「気」のせいかもしれません。漢方をお試しいただいて良いのではないか、と思います。
そういう方にも、一度ご相談いただけたら、と思っています。