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漢方的なものの言い方をすると、「女性は七の倍数で身体が変わっていく」と古い本(『黄帝内経』の「素問」「上古天真論」)には書いてあります。

だいたい14歳を目安として(最近は少し早くなりましたので、11−12歳ころの方が増えてきておられます)月経がはじまり、その後、49歳くらいを目処に月経が来なくなります。

この、月経が来なくなった状態を「閉経」と呼びます。現代日本人の平均は51歳ということだそうですので、昔の言い方から多少は遅くなったかしら?とは思いますが、もともと7の倍数、というのもざっとした把握ですから、それほど大きくは変わっていないと言えるのでしょう。

閉経の前5年、後5年の10年間を「更年期」と呼びますが、この時期にさまざまな体調不良が出現することがあります。これが生活に支障をきたすようになると、「更年期障害」と呼びます。

更年期障害とされる症状としては、典型的なものは「(顔や頭に)汗をかきやすい」とか「急にのぼせる」などの症状が有名で、いわゆるホットフラッシュと呼ばれたりしています。他には「疲れやすい」「しんどい」とか「倦怠感」などの全身症状が多い印象です。さらに「気分が落ち込みやすい」「イライラする」というような精神的な症状も見られることがありますし、「(手足の)関節が痛む」など、整形外科的な症状も、場合によっては更年期障害として扱われることがあります。

更年期の40歳台後半から50歳台にかけて、という時期は、年齢的に内科的な疾患も増えてくるお年頃になっておられますし、女性ホルモンの減少自体が、そういった内科疾患の増加を引き起こしますので、お困りの症状があったときには、内科的な異常は無いだろうか、と確認をします。そして、内科的な疾患が「無い」という確認をすることで「それじゃあ、更年期障害ですね」と、診断をつける、いわゆる「除外診断」となります。

更年期障害と見間違えるような内科疾患としては、たとえば甲状腺ホルモンの低下やうつ状態、変形性関節症、リウマチ性関節炎などが挙げられます。これらは、場合によって、更年期障害と似た症状を引き起こすことがあります。ホルモンの異常やリウマチ性関節炎などを疑う場合には、採血などによる評価が必要です。

更年期の時期は、それまで卵巣から分泌されていた女性ホルモン(エストロゲン)が、卵巣の働きが低下してきて、分泌されなくなる、変化が起きています。しかも、この変化はかなり急激に起こる、とされています。更年期障害の治療には、この急激に分泌量が減少したエストロゲンを補う、「ホルモン補充療法(HRT)」が有効と考えられます。臨床的に、ホルモン補充療法によって症状が改善する場合も多く、やはりとても有用な治療です。とはいえ、更年期障害で認められる「全ての症状」に効果的とまではいえません。またエストロゲンの補充を行うことで、別の病気のリスクが高まることを懸念する場合があり、こうした場合には、ホルモン補充療法を避けることが推奨されたりしています。

こうした、ホルモン補充療法だけでは解決しない症状、あるいは、ホルモン補充療法ができない場合の更年期症状に対して、漢方薬による治療は一定の効果を出していると考えられます。

更年期障害の症状の強さは、個人差があり、ほとんど症状を自覚されないままで、更年期を通り過ぎる方と、症状がとても強くて、お困りになられる方がいらっしゃいます。どのような方に症状が強く出るのか、という調査をされた先生がいらっしゃいました。その調査報告によると、出産や育児などの時期に大変なエピソードがあった方では、更年期障害が強くなりやすいのだ、という報告がまとめられています。これは、妊娠・出産や育児において、無理をされたり、すごく頑張っておられたりしたことの影響というか、反動というようなものが、この時期、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することで、表面化して来る、と言うことができるのかもしれません。

これを、わたしは「出産育児支援金の打ち切り」という表現でご説明しています。女性ホルモンとは、妊娠出産育児に関係する状態を支えるためのホルモンであり、更年期には、そろそろ育児が終了します(子どもの年齢がまだ小さい方もあるでしょうけれど、生物としては「そろそろ育児終了ってことで良いよね!」っていう打ち切りが入ることになります)。それまでに、「出産育児支援金」という体力の下支えをあてこんで、無理をしていた…というか、無理をせざるを得なかった、という方は、やはり、体力の「資金繰り」がもともと少し厳しくなっておられたところだったものが、この「支援金の打ち切り」ということで、急激に悪化します。今までの運営体力がしっかり残っていた方はそれほど困ったことが出ない一方で、ギリギリ、とか、無理が重なった、という方がやりくりを乗り切れない…というところが、更年期の症状として出現するのだ、と考えていただくと、わかりやすいのではないでしょうか。

逆に言えば、今までとは、生活のリズムや生活の目標が大きく変化する時、でもあります。出産育児に対する支援がなくなるわけですから、これからは、自分のために体力や時間を使っていっていただきたいものだ、と思っております。

更年期の診療においては、おひとりお一人、症状が多少異なります。それぞれの症状を読み解きながら、漢方薬などを用いつつ、体力を回復させてゆくこと、ご自身を大事にしていただくことをお薦めしています。

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