『美人伝心』

先日、植島啓司先生の『心コレクション』という本をご紹介しました。

青年と老年のあいだ(『心コレクション』から)

わたしの精神科の師匠が紹介してくださった関係で、植島啓司という宗教学者の先生を知ることになりました。 かなりの数の本を執筆・出版されているのですが、植島先生の本…

2010年の刊行で、今は新刊書としては販売があやしいところですが、しかし、心に沁みる文章がちりばめられた珠玉のような本です。

同じ植島啓司先生の監修で、2011年には『美人伝心』という本が刊行されています。

「輝きを失わないで生きる15の心得」と題して、15人の、当時活躍されていた女性15名にインタビューをして、そのインタビューから、「年齢を重ねても生き生きとしている」女性の特徴のようなものを抽出してきた、という本です。

目次には

見に行く
変わり続ける
扉を開ける
頑張りすぎない
さらけだす
考える
憧れる
やわらかく
いつも笑顔で
納得する
軸を作る
解き放つ
勇気を持つ
うつろう
挑戦する

と並んでいます。そして、植島啓司先生が最後に「美人伝心」という記事を書いていますが、その冒頭が

自分と違う価値観を受け入れることが大人の女の条件

と書いてあります。

生きる、ということは、自分の外の存在を、自分の中に取り込み、自分の一部にしてゆく、というプロセスを続けることでもあります。これを「同化作用」と呼びます。

もっぱらヒトでは「食事」という形でこの「同化作用」を発揮しているのですが、物質世界の話だけではなくて、精神的な世界では、「自分とは異なる存在の考え」を、「自分の考えの中に迎え入れ」て、「自分自身の考えの一部にしてゆく」ということだって、立派な「同化作用」の発揮です。

そして、ひとがひととして生きる、ということは、精神的な同化作用を発揮することも含まれるのだとわたしは考えます。

そういう意味では、ときに挑戦し、あるいは自分の軸をはっきりさせ、勇気を持ちつつ、変わり続ける、ということはとても大事なことなのだと思います。

そうやって、生きることをしっかりとなさっている方の人生は、きっと、美しい。

単に見た時の形が整っている、という話ではなくて、人生が発露しているところには美があるのです。

それは、わたしたちが生きているからではないでしょうか。

生きているもの同士の響き合いで、美しさをわたしたちが感じる、ということでもあるのだろうと思います。