いちどにひとつずつ

ボディートークの師匠からは、グループレッスンの組み立て方…は習いませんでしたが、レッスンの時、どうやって受講者の方に動いてもらうようにするのか、という話はけっこうありました。

わりと身体を動かすプログラムが多いですから、フロアの机や椅子は取っ払って、平らな床が見えている状態でのレッスンになります。

が、時には、椅子に座ってもらうことだってあります。話が長くなるときとか。

今でも覚えているのは

「今からメンバーに、椅子を取りに行ってもらって、その椅子に座って貰いましょう」という課題でした。

みなさん、椅子を…

と、言った時には、椅子の所に、自分がたどり着いていると、メンバーの人たちは、慌ててついてくるから。

と、そんな話を聞きました。

言葉だけで伝える必要はないわけです。

言葉で伝える時のコツは「いちどにひとつずつ」でした。

「いまから体操をしますから、みなさん、ひろがって。足を投げ出して座ります。手は後ろについて、肩を揺すります」っていちいち説明していると、頭が追いつきません。

それよりは、「手を後ろにつきますよ」…「はい。肩をブラブラ…」という形で、順番にやっていく方が、動きやすいわけです。

そして、まずは「ふんわり」と、了解してもらう。

細かい話はあとまわしで良い、っていうのが、師匠の説明でした。あまり細かいことを伝えるよりは、まずはいちど、やってもらうのだ、と。

そういえば、こうした指導法についても、細かい話はあとまわしで、まずはいちど「やってみてくださいね」と始まったものでした。

何度かやっている間に、「ここは…」みたいな話が出てくるまで、ずいぶんと待ってくださっていたのだろうと思います。

…なんだか、書けば書くほど、師匠というひとのありがたさを、改めて思います。

20年どころか、30年近く前のことですが、それでも鮮明に覚えていることがありますし、この時に学んだことが、わたしの根っこになっている、と折に触れて感じることです。