のどの部分の違和感について

漢方の診療が得意とする症状の1つに、「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」と呼ばれるものがあります。

ものが呑み込みづらい感じがする、あるいはのどが詰まっている感じがする、という症状がある方、わりといらっしゃいます。

もちろん、実際に食物や飲み物が流れていかない、という病気もあります。たとえば「食道アカラシア」と呼ばれるような病気が代表的です。こういう、食べ物飲み物が実際にのみ込めない、ということであれば、きっちりと消化器科で相談していただいて、治療が必要になってくるような病気であることもありますので、しっかり検査を受けてください。
他にも咽頭部の腫大とか、ポリープ、みたいなものでも、ひっかかった感じが残る、なんていうこともあるでしょうから、消化器科ないし耳鼻科、ということになります。そういうクリニックなり病院なり、で診ていただくことが大事だと思います。

そういう検査の結果で「とくに異常が無い」ということになると、これは「咽喉頭異常感症」と呼ばれるような病態である、ということができると思われます。のどの部分になにかが詰まっているんだか、挟まっているんだか、みたいな異常感が続いていて、食べ物や飲み物が、呑み込みづらい感じはあるのだけれど、ちゃんと呑み込めていて、違和感だけが残っている、という症状です。

漢方の本には、こういう違和感について「梅核気(ばいかくき)」なんていう名称で書いてあったりします。ウメボシの種が、のどに残っているような、そんな気配が続いている、という意味です。
あるいは「咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)」などと書いてあるものもあります。こちらはのどに、あぶった肉が張り付いているような感じ、とよく説明されます。

これは、漢方的には「気鬱(きうつ)」の状態であると考えられます。つまり、異常感がある部分などで「気」の巡りが滞っている、ということがこの症状を作り出している、という説明になります。

典型的には、この症状に対して「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」と呼ばれる処方がよく効きます。

漢方外来にいらっしゃる方の中には、ご自身で半夏厚朴湯をお試しになられた方もしばしばいらっしゃいます。試しに使ってみたけれど、あまり改善しなくて困っている…という方にもお目にかかったことがあります。

そうなると、そこから先の治療を、どうやって考えていくのか?っていうのが漢方の専門科としての腕の見せ所になりますが、意外と漢方ではなくて、首のまわりのストレッチで症状が軽減される、なんてこともあったりします。

ところで、半夏厚朴湯は気鬱への処方だと書きましたが、このような処方が効く状況の方は、けっこうストレスがかかっておられることも多いです。ストレスへの対処としてみぞおちを揉むことをお薦めしていますが、こういう方にも有効なことがありますので、お試しくださいませ。

ストレスとみぞおちの緊張

みぞおちの部分を、漢方の腹部触診では「心下(しんか)」と呼んでいます。この部分をおして痛みがあったり、あるいは緊張していて、そもそもつっかえるような感じがある…