カフェインによる不眠症状
もうずいぶん昔の話になります。村上老師がご存命であられたとき「京都の宿に泊まるから、顔を見せにおいで」とお声かけくださったことがありました。まだ学生のじぶん、何かの用事だったか、授業が終わってからだったか、ずいぶんと遅い時間になってしまいましたが、賀茂川沿いの宿にお伺いして、お話を伺ったのを覚えています。
お聞きしたのは、戦時中の、南方での日本軍の事情だったように記憶していますが、長いこと、和室でお話を伺い、気づいたら、夜もとっぷりと更けていたのでした。
「おや、お茶を頂いていたので、すっかり目がさえてしまっていた」とおっしゃっていたのを、覚えています。
え?お茶にそんなに影響があるものなのだろうか…?と思っていたのは、わたしが若かったから、なのかもしれません。
それから何年も経ってからのこと。
わたしもいっぱしの産婦人科医として当直業務にあたっていた日のことですが、どうにも目が冴えて眠れない…と当直室のベッドでやたら寝返りを打つことがありました。一体どうしたのだろうか…?なにか悪い予感がある?わけでもなさそうだし…とずいぶんと苦心惨憺したのですが、しばらく経ってから、はたと気づきました。
その日は、たまたま医局にアイスコーヒーを頂戴していて、口当たりが良かったのと、のどが渇いていたことが重なって、それをがぶ飲みしていたのでした。
カフェインの半減期はおよそ8時間と言われています。なかなか侮りがたいほどに影響が残ることがあるようで、眠れない、ということの理由になるものなのだなあ…と認識を改めると同時に、カフェイン入りの飲料に用心するようになったのでした。
カフェインが入った飲み物を避けるようになると、たまに口にするお茶や紅茶、あるいはコーヒーの影響が結構大きく出る、ということにも気づきました。
とはいえ、ときどき、注意していても…ということがあります。
先日、夕食後についうっかり緑茶を、それも結構な量飲んでしまったのでした。この影響に気づいたのは、お茶を頂いてから、ずいぶん経ったところでした。いつもどおりに就寝したのですが、午前3時ころに目が覚めて、しかも妙な目の冴え方をしていた時に「あれ?いったいどうしたのか?」と考えて気づいたのでした。
カフェインの影響で目が冴えている状態、というのは、ずいぶんと奇妙な状態で、頭のどこかは眠りたい、と考えているようなのに、別のどこかが、それを引き留めている、というような、不思議な矛盾があったりするように感じます。
もちろん、カフェインの影響は個人差がありますので、全ての方がそのようになる、という話ではありませんが、眠れない、という方の中に、カフェインが影響されている場合もあるのかもしれません。
実際、カフェインの影響を完全に抜くには2週間くらい、カフェイン断ちをしていただくのが良いようです。なかなか生活のスタイルが変わってしまいそうですが。
なお、カフェインには「不安を増強させる」作用があると言われています。
ホッと一息つきたいときに、コーヒーや紅茶などの温かい飲料が良いように思いますが、カフェインの影響を考えると、別のものを選ぶのが良いのかもしれません。