ツボの話
なんでも、アナリティクス?というものをやってくださった方があったらしく、その調査結果みたいなものをお伝えくださいました。なんでも「ルビンの壺」の話を検索されてWebサイトを訪問される方があったらしい?っていう話でした。
とはいえ、うちは漢方内科クリニックです。いわゆる「ツボ」って経穴のことをそう言いますから、漢方+鍼灸なら、ツボの話、そうね、ってことになりそうなのですが、今回はそっちの「ツボ」じゃないんだそうで、完全にツボが違いました。
ルビンの壺、みたいな話をしても、ねえ…って言っていたのですが、思い出しました。壺の話。
昔、婦人科の診療ガイドラインを策定されていたような教授の先生と、一緒に食事をする機会があった時の話です。「ぼくは、壺を売りつけたら元気になる、っていう方があれば、壺を売るのも治療だと思っているんです」って、かなり乱暴な議論をふっかけたのでした。にしむら、酔っ払っていたのかも知れません。
「壺を売るなんて、そんな非科学的な話をするとは!とんでもない!」ってお怒りの言葉が降って来ても不思議じゃなかったはずなのですが、その先生はなんと「じゃあ、キミが『壺を売りつける』っていうのをガイドラインに載せたら良い」って切り返して来られたのでした。すごい。とはいえ、じゃあガイドラインに載せよう!って言えるほどのエビデンスは…あるわけが無いんですよねえ。
もちろん、身の回りを居心地の良い場所にするのに、いろいろなアイテムがあります。お気に入りの絵、花、あるいは、陶器。もちろんお気に入りの壺があったって良いわけです。生活範囲がお気に入りのもので囲まれて、居心地が良くなれば、それも元気になるひとつの材料であるわけです。
だからって、どんな壺でも良いわけじゃなくて、自分の好みがありますから、自分で見つけてくるのが大事になります。間違っても他人が「この壺が良いのよ!300万円!」ってのをそのまま黙ってお金を出しましょう、という話ではありませんのでご注意くださいませ。
元気になるなら、おおよそなんでもあり、って思うと、処方箋も、単なる薬の選択だけじゃなくて、「散歩に行ってみる」とか「お気に入りの場所を見つける」とかっていうのも、ある種の処方箋になりそうです。なかなか、医療保険の医療の範疇にはおさまりづらいなあ、とは思いますが。