テケジョってご存知ですか?
理系女子のことを「リケジョ」というようになったのだそうです。いつ頃のことだったでしょうか。割と最近は当たり前にそんな表現をするようになりました。
で、その仲間?に「テケジョ」ってのがあるんですって。
テケジョ。
これ、「鉄欠乏女子」の略なんですって。

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人間の身体の中で、赤血球っていうのは、とても大事なはたらきをしています。
なんなら、35兆くらいある細胞のうち、最も数が多いのはこの赤血球で、およそ10兆を超え、人体の細胞の3分の1は、赤血球なのだとか。
昔、「ひとの細胞はすべて赤血球に由来する」みたいな話を書いておられた先生がありました。千島学説、として一部で有名だったりしますが、まあ、こんなに数があって、あちらにもこちらにもあるのだったら、そう考えたくなるのもむべなるかな、ということだったのかもしれません。
ちょっと脱線しましたが、そんな、大事な赤血球を身体の中で作るのに、必要な元素として、鉄が真っ先に挙げられます。なので、鉄が欠乏すると、赤血球が作れなくなる。じっさいには、赤血球の中の「ヘモグロビン」という色素に鉄が不可欠ですので、これが少ないと、色の薄い赤血球とか、小さい赤血球とかが増えることになります。いわゆる、鉄欠乏性貧血と呼ばれる病態です。
赤血球には、だいたい寿命というのがあって、120日くらいで古くなった赤血球は脾臓などで分解されるのだそうです。
この、赤血球の寿命をどうやって計算したんだ?っていうのもすごく面倒くさい話がありそうです。だって、つかまえて観察…っていうと生理的な状態から離れますから、誤差が大きくなるでしょ。だとするなら、どうやって入れ替わった赤血球の数を数えるのだ?というあたりが難しいわけです。
なんか、うまいこと計算をした先生がいらっしゃるのでしょうけれど。
寿命の話でいうと、セミ。セミって、成虫になるまで、けっこう長いこと地下で潜って生活をしているらしいのですが、成虫になったら、寿命はだいたい1週間くらい…と言われていました。でも、調べたら、もうちょっと長生きしているんですって。
この調査をやったのは、中学生のセミ博士。長いと30日前後生きているセミも居るのだそうです。
へええ。
1週間じゃなかったんですねえ。
ええと、赤血球の寿命の話をしていたのでした。120日くらいで寿命がくると、段々、赤血球は細い血管の中を通るのが難しくなるのだそうです。細胞膜が時間とともに硬くなってくる、とかそういうことでしょうか。そういう細胞を、網内系と呼ばれる、脾臓の中の細い血管に通して、引っかかった赤血球を分解・回収するみたいですねえ。
回収された材料は、再利用します。鉄の再利用率はほぼ100%なのだそうですから、出血で血が失われることがなければ、鉄が足りなくなることは、滅多にないのだとか。
ところで、若い女性の多くは、月経があります。月経があると、出血するわけです。出血があれば、その分、回収できないで失われる鉄がある、という話になります(男性の場合、滅多にそういう出血による喪失がありませんので、男性の鉄欠乏性貧血を見かけた時には、出血している点があると想定されます…場合によっては消化管出血が疑われるので、大腸癌検査などを強く薦められることになります)。
こうした、出血が続き、かつ、鉄の吸収が足りない状態が続くと、「鉄欠乏状態の女性」になります。これが「テケジョ」と呼ばれる状態です。
鉄が欠乏するといろいろな不調が起こります。貧血もそのひとつですが、この「テケジョ」を提唱された先生方は、数字の上では貧血と言われない状態であっても、鉄欠乏状態が続くことで引き起こされるようなうつ状態があるのだ、と主張されています。
そういう方にしっかり鉄を補充すると、うつ症状が改善されるのだとか。
ところで。
ここでもうひとつ問題があります。
鉄をどうやって補充するのが良いのか?という話になるのですが…。
一般的には鉄剤を内服してもらう、という話になるのですが、この鉄剤、っていうのは、けっこう胃腸の症状を引き起こすことがある、と言われています。
たいてい、こうした「テケジョ」と呼ばれるような方は、胃腸の力が弱くて、鉄剤を内服すると、胃が重たくなる、とか、吐き気が出てくる、などの症状が強くでてくる場合が多いように見受けられます。
鉄は摂ってもらいたいけれど、胃腸も大事にしてもらいたい…というあたり、痛し痒しなのですが…。どうしても難しい、という方には注射薬を使います。これは最近、月1回の投与で良い、という大変便利な注射薬が出てきて、だいぶ楽になりました。
とはいえ、鉄が体内に入ると、リサイクル率がとても高いですので、投与しすぎには本当に注意が必要です。鉄の過剰はそれはそれで不調がでることがありますので…。
漢方ではどうするのか?っていうと、まずは、胃腸を整えるところから始まります。やっぱりそこから、って話が、漢方の診療の根っこにはあるように思います。
胃腸の力がついてきたら、鉄剤も平気です!ってなってくだされば、本当に良いのですが。












