ホットフラッシュのこと
大学院生だった時の話は、以前もちょっと書いたのですけれど、その頃の思い出とあわせて、ホットフラッシュの話をします。
大学院生の時に、漢方専門医を取得しましたが、ちょうどそんなおりのことでした。大学病院の産婦人科診療の枠内で「女性漢方外来」というのを立ち上げよう、という話が進みました。人選にいろいろ苦慮されたらしいのですが、結果として(ちょうど漢方専門医を取得したこともあったのか)私にその話が回ってきましたので、大学の女性漢方外来の立ち上げの時に担当し、しばらく診療をしていたことがあります。
その時、いろいろな症状の方がいらっしゃいましたが、その中でも「更年期障害」をおっしゃる方がけっこう多かったように記憶しています。
漢方薬を処方することで、倦怠感だとかしんどいというような自覚症状はだいぶ改善されたのですが、当時の私の診療能力では、「ホットフラッシュ」を劇的に改善することはできませんでした。
とはいえ、ある程度いろいろな漢方薬を使って、多少は良くなる余地が出てきておられたんだろうと思います。
漢方外来にいらっしゃる方の中にはどうしてもホルモン療法はできない、したくない、という方もいらっしゃるので、私もついつい、この方もそうだろう、と思い込んでいたのですが、よくよく話を聞いてみると、別にホルモン療法にも抵抗はないし、使ってはいけない事情もない、とおっしゃる方がいらっしゃって、それじゃ…ってお試しにホルモン剤を処方したところ、次の外来で「ホルモン剤を使ったらその日からホットフラッシュがなくなって!」と、びっくりするような効果を報告してくださいました。やっぱりホットフラッシュにはホルモン療法が効くんだなあ…と、半ば喜びながら、それを漢方薬だけでなんとかできないか、という気持ちもあったり、ちょっと複雑な気持ちになったことを覚えています。
ホルモン剤をいろいろな事情で、使ってはいけない方もありますので…。
あれからかれこれ10年くらい経って、それなりに私の漢方診療の腕もあがった、のでしょうか。以前の自分の処方を見て、「なんて下手な処方なんだろう」と思うことも出てくるようになりました。
そして、ホットフラッシュへの対処方法が増えてきました。そのおかげ、というのもありますが、最近、ホットフラッシュがどうして起きているのか、というのがうっすら理解できてきました。
更年期の話を書いたときに少しだけ触れましたが、
頭の緊張と使いすぎが、頭での熱発生に影響しているのだろうと思われます。
この熱というのは、温度が高くなる、という形に出ることもありますし、人によっては「じんましん」みたいな皮膚の炎症、という形になる方もあります。
そして、頭の熱がこもると、どうしても不眠になりがちです。そして、不眠になると、眠っている間に補充されるはずの「血(けつ)」が足りなくなります。そうすると漢方的には「血虚(けっきょ)」になります。血虚があると、体調の変動が出やすくなりますので、ちょっとしたことでも、冷えが出てきたり、あるいはのぼせが出たりしやすくなります。こうした体調の不良をまた、自分自身の心配事として思い悩みに加算されると、さらに頭の緊張と使いすぎが増えていきますので、どんどん悪循環に入っていきます。
これを調整するためには、清熱剤と呼ばれるような処方を使いつつ、頭の緊張を取っていくことが必要になります。そして、頭の中に残っている業務を止めるために「未完了の完了」が大事なことになります。
未完了の完了についてはこちらに。
更年期ころの女性はだいたい、家の中の采配をされていることが多いですし、家事はなかなか区切りがつけづらい仕事が多いですから、どうしても完了しきれない考え事が多くなるのも、女性にホットフラッシュが増える理由なのかもしれません。