ムチウチ症における症状の出現タイミング
自動車の追突事故などで、しばしば「ムチウチ症」になる、ということをみたり、聞いたりします。
この「ムチウチ症」なのですが、不思議なことに、あまり何処にも異常が無い、という扱いなのだそうです。
いや、首は痛いし、吐き気が出てきたり、目が回ったりしますよねえ…「それだけ大変なのに、どこにも異常が無い!って、どういうことですか!?」って声が聞こえて来そうです。
整形外科学会のWebサイトには
医学的な傷病名ではないので、外傷性頚部症候群(頸椎捻挫・頚部挫傷)、神経根症(頸椎椎間板ヘルニア・頸椎症性神経根症)、脊髄損傷など医師の専門的診断を受けることが必要です。
と書いてありました。
首の損傷、ということを考えると、いわゆる「ムチウチ症」だけであれば、骨折や脱臼に比べると、たしかに「はっきりした異常とは言いづらい」部分になってくるのかもしれません。
いわゆる「五十肩」は、いちおう医学的にもそのまま用いられる病名だったりします(「肩関節周囲炎」という呼び名の方が、「正式な医学的病名」っぽいですけれど…)が、「ムチウチ症」は、そのような「病名」としても不完全、という扱いなのでしょう。もちろん、そう呼ばれるような症状がそもそも存在していない、などというわけではありません。
交通事故のエピソードとして考えると、わりとよくある話なのかもしれませんが、事故に遭った当日や、その後の数日は、自覚症状があまり出てこないこともけっこう多いようです。気を張っている、ということもあるのでしょうが、ご本人が自覚されていない症状が、少しホッとしてから、次々出てくる、なんていう話もしばしば耳にします。
この、症状が時間差で出てくる、というのが、けっこうな曲者なんだよなあ、って思います。
わたしの師匠の一人で、ボディートークを始めた増田明氏は、「ムチウチ症は、事故の時に急激にかたまった首の筋肉が緩んでいく時に出る症状だ」と説明しています。大きな衝撃を受け止めるために、首の筋肉が強く緊張して、そのままになってしまっているところが、ゆっくり緩んでいく時に症状がいろいろ出てくるのだ、と考えるのだそうです。
肩こりも、緊張が強くなりすぎると自覚症状は消失しますが、ムチウチ症も、衝突の衝撃によって、強い緊張が一瞬のうちに作られてしまっている、のかもしれません。
とはいえ、この頚部の緊張を緩めていくことも慎重にせねばなりません。急激に緩めると、様々な症状が一気に出現することだってあり得ますし、首の筋肉を痛めた状態で、極端な働きかけをすると、かえって悪くしてしまうことも懸念されます。
ムチウチ症への直接の関わりは慎重にして頂くことにしても、痛みや症状が、発症の原因から、少し離れたところで出現する、という身体のメカニズムというか、仕組み、ということを、少し頭に入れておいて頂くことで、あまりびっくりされずに対処して頂けることもあるかと存じますので、ここに記しておきます。