元気になっていく人の共通点

クリニックを開業し、ここで診療をはじめて、そろそろ1ヶ月になります。
まだ、それほど長い時間が経過したわけではありませんが、早速、お元気になっていらっしゃる方があります。

すごく元気になられた方の場合は、次の予約の日にクリニックに入っていらっしゃったとき、別人じゃないかと思うようなことだってありました。

こういう風に、どんどんと元気になっていく方には、共通する「人生のコツ」みたいなものがあるのかも知れない、と思います。

たとえば「提案されたことを、じっさいに試してみる」。ある種の変化をしっかり引き受けられる、というか。
ここからさらに進めて、「提案されたことをじっさいに試して、効果を感じたので、似たような形の新しい取り組みを始める」という方もいらっしゃいました。

「他人の意見を取り入れる柔軟さがある」ということは、元気になっていくにあたって、とても大事なこと、なのかもしれません。

生き物は「同化作用」という行動を持っています。食事を摂って、それを自分の身体の一部に取り込んでいく、というようなことを「同化」と呼ぶわけですが、生物として、この「異物を取り込み、自分にしてゆく」という行為は、個体が生きていく上で、とても重要なことになっています。

ひょっとするとヒトの「精神」の部分にも「同化作用」があるのかも知れません。もともと異物のような他者の思考や、行動パターン的なものを、何らかの形で取り込んで、それを自分自身の思考や行動のパターンのバリエーションとして持っておく、という行為は、緊急事態に出せる「手札」を増やす、という意味合いではとても大きな生存戦略になります。

ただし、こうやって、異物を取り込む、という行為は、別の言い方をすると、「自分自身が変化してゆく」ということにもなります。

そして、自分自身が変化してゆくことは、生命としては、わりと普通のこと、かもしれませんが、個人として、自分の今までのあり方とは変わっていく、ということは、ある種、「自分がなくなっていく」ような意味合いも含まれる場合があります。

今の自分が、新しい自分に変わっていく、というのは、ある種、「今の自分」を喪失することになりかねません。

これは、じつは、とっても怖い。

なにしろ、今の自分自身にとっては、この「今の自分」こそが「わたし」なわけですが、変化することで、「わたし」は喪われてしまうわけです。自分自身の存在が揺らぐ、ということほど怖いものはありません。

怖いから、やっぱり、そこに自分自身をゆだねることは難しい、という結論を、他の理由をまぶしたりしながら、言い続ける、という人生の方もあるでしょう。

ここで「病気であり続けること」から脱出するのは「怖い」というような形になってしまっているのであれば、これはまさに「疾病利得」と呼ばれるものになるのだろうか、とも思います。

病気をしていることで、「良いこと」がある、というのが、疾病利得の考え方ですが、その良いこと、というものの1つとして、「現状が変わらない」というものを知らず知らず、求めているということがあっても不思議ではありません。

他人の意見であっても、あるいは新しく見つけた、自分の意見であっても、それを採用するときには、やっぱりいろいろなプロセスがありますし、現在の自分を変化させてゆくことはとても怖いことです。

ですので、良くなりもしないけれど、悪くもならない、という場所が、心地よくなる、ということもあり得ます。ただし、やっぱり、しんどいことだって続くわけです。

「現状維持」を突き破ろうとする気持ちや体力が、変化には必要です。

良くなっておられる方、わりとそういう気持ちも体力もお持ちだったのだろうなあ、と、近くで拝見していて、そのように思います。