冷え(手足が冷える)について

手や足が冷えている、って方、けっこういらっしゃいます。西洋医学でも時々、サーモグラフィーカメラなどを用いて、表面温度の評価をすることもあるみたいです。

冷えには漢方でしょう!とおっしゃってくださる方もあります。漢方の知名度があがってきていることは、本当にありがたいことです。

手足が実際に冷たい場合もあれば、それほど冷たくなくてもご自身の感覚として、「冷たいように感じる」という場合もあったりします。
直接冷えている、ということだけではなくて、「クーラーに当たるとてきめん調子が悪くなる」というような症状で出てくる「冷え」もあります。

「妊婦さんは冷やさないようにしましょう」なんていう表現もわりと見たり、聞いたりされた方があるかもしれません。じゃあ、妊婦さんは真夏でも厚着するのが良いのか?っていうと、どうやらそういう話ではないらしいですから、冷やす、冷やさない、ってどういうこと?「冷え」っていったい何だろうか?って考え込むことになってしまいます。

「冷え」とは何か、という話題だけで、一冊の本が書けるほどには話題があるらしいですので、あまり細かいところは触れませんが、理屈としては、冷えの原因、というのがいくつかあると考えられます。

まずは、そもそも身体を温める力が弱い場合。体温を維持するためには、主に筋肉が収縮するときの熱を用いることが多いのですが、筋肉量が少ないと、体温の維持が難しくなります。女性の方が筋肉量が少ないとされているため、冷え症の方が女性に多いのだ、という話があります。

次に、熱を末端まで運ぶことができない場合。血流が悪い場合には、末梢の血管まで熱の伝達をするのが難しくなります。全体に余裕がなくなり、省エネのモードになった結果、辺境までの物資輸送を諦める、というようなたとえ話を使いますが、手足の血管が収縮して、冷える、ということがあります。

この血管が収縮している、あるいは血管の流れが悪い、というのにも、いわゆる血管や血流そのものが流れの不調を引き起こす場合と、それから、ストレスなどによる神経性の血管収縮と、があります。

漢方の診療で言うなら、そもそもの身体の熱を作る力を補うような処方がありますし、冷えている身体やお腹を温める「温薬」あるいは「熱薬」と呼ばれるような生薬の組み合わせが用いられることになります。これが本当に筋肉に作用しているのかどうか、はちょっとわかりませんが、もともと冷えて調子が悪くなっている方を暖める、という処方がいくつかあります。

また、血流そのものの改善をするような形で、冷えを改善する、という処方があります。シモヤケなどは、こうした血流の改善を目的とした処方が有効であったりします。

そして、ストレスを緩和する処方で、手足の冷えが軽減する場合もあります。これはストレスないしは緊張性の神経による末梢血管の収縮ですが、リラックスすることによって、末梢の血流が改善します。

みぞおちを揉んでいただくことでも、このストレス性の冷えは軽減することがありますので、お困りの方はお試しくださいませ。

漢方の研究をされていた先人によると、行きの血流が悪い時に用いる処方と、帰りの血流が悪い時に用いる処方が違うのだ、ということもあるみたいですが、なかなかそこまでは判定しづらいです。
とはいえ、冷えにもそれぞれの病態がありますので、これらをしっかり見分けて、いちばん効果的な処方の選択をすることが大事だと考えています。