右足と左足

ファンタジー系の小説を読んでいると、時々「エリクサー」という魔法のような回復薬が登場します。それぞれ、小説の描かれた世界によっても異なりますが、しばしば「欠損した手足をも回復できる」というような描写がされています。
そういえば、昔星新一のショートショートだったか、で、クローンの腕、という話がありました。
ずいぶんと技術が進んだ時代のこと。それでも腕を欠損してしまう事故はどうしても起こってしまいます。そんな腕をなくした方が、そりゃ時間もお金もかかったのですが、バイオテクノロジーを用いて作った腕を、再接着する、という話でした。「しかしお金がかかるよねえ」って話に、担当した治療者が「コストがねえ、かかるんですよねえ」って話をするんです。「部分だけ作るわけにいかないので…まるまる一人分の身体ができてしまうんですよねえ…」って。
で、ギョッとして「残りの部分は…?」って尋ねると「もったいないのですが、廃棄処分ですねえ」って返事が返ってくるのでした。
わたしの腕を入手するために、見えないところで、自分のそっくりさんが、腕を切断されて、残りの部分はまるごと廃棄される…っていうこのブラックなユーモアに、当時しびれる思いをしました。星新一氏、やっぱりすごいですよねえ。
脱線してしまいましたが、エリクサーの話。世の中には「エレキシル」なんてものもあります。発音の違いですね。さすがに世間で販売されているエレキシルとか、エリクサーがそんなに手足が生えるような効果は、とうてい得られないでしょうけれど…。
あるいは、回復魔法のすごいのになると、欠損が回復する、なんていうのもありました。
こういう「回復」のプロセスって、どうなっているんでしょうねえ…?
トカゲの尻尾が切れた場合、その先はあまり長いものが生えることは無いみたいです。ちょこっと、「いちおう、生やしたよ」くらいの先っぽが見えることがあります。尻尾を切るのは有名ですが、やっぱり緊急事態の話で、尻尾と命を天秤にかけるくらいは命がけなんですねえ。
トカゲではなくて、魔法の薬で回復するときに、欠損した部分は、断端からニョキニョキと生えてくるのか、それとも、元の輪郭の部分に突然?発生するのか、まあなんかそういう時は光りそうですから、まぶしくて見えない…なんて目を閉じている間に出てくるのでしょうか。
回復魔法を使うときに、鋳型が無いとダメで、それは反対側の手や足を鏡像でコピーして使った、みたいな記述をされている小説もありました。
いろいろと工夫されているんだなあ…と思いながら、そんな小説をつらつらと読んでいます。
ところで、診療で、ひとさまの両足に触れることがあります。
最近、とみに思うのですが、右足と左足、だんぜん違います。
左右を揃える、って言いますけれど、鏡像でコピーしたら揃う、というような揃いかたではありません。どちらかというと、「三つ揃え」的な揃い方です。右足と左足とはぜんぜん別の働きがあるなあ、と思いますし、気を通す時の動きもずいぶんと違います。
まあ、違う、というのは今のわたしの心境がそのようである、ということだけかもしれません。そのうち「違うと言っていたけれど、違う水準もあれば、違わない水準もある」みたいなことを言い始めるのかも知れませんが…。
ちなみに、左足の、だいたい足首近くが、やっぱり胃腸と繋がっている様子があります。
このあたりに触れると、お腹の調子がなんとなくわかる、という感じがします。どこまで客観的な事実か?と訊かれると、さあ?なんとも?としかお返事できませんが…。