夜間頻尿の話
「夜にトイレに行きたくなって、目が覚める」という方がけっこういらっしゃいます。
多い方になると、夜寝ている間に2-3回とか、それ以上の方もあるみたいですが、夜中に目が覚めては、トイレにいらっしゃるのだそうです。ものの本によると、60歳台で、夜間1回くらいまで、70歳台になると、夜間に2回くらいはそういうことがあっても、「まあ普通のこと」になる、とは書いてありましたが、あまり頻繁になるとおちおち眠ってもいられません。
ところで、「トイレに行きたくなって、目が覚める」方と、「目が覚めたら、トイレに行きたいと感じて、行ってくる」方がいらっしゃいます。
…同じことじゃないんですか?って言われるかもしれませんが、ちょっと違います。
前者は、やっぱり夜間の頻尿に近い形。一般的に眠っている間は抗利尿ホルモンと呼ばれるホルモンが分泌されているので、尿量は比較的減るはずなのですが、それでも尿が多くて、排尿の刺激が発生してしまう方。
後者は、もともと眠りが浅くて、なにかの事情で目が覚めてしまって、「ついでに用を足してこようか」という行動をとられる方。
昼間の頻尿でも、一回ずつの尿量が少ない方がいらっしゃいます。どちらかというと、神経が過敏になっているときに出やすいのかもしれません。
あとは排尿日誌なんかをつけて、水分をどのくらい摂っているのか、実際にどのくらいの排尿なのか、みたいなことを検討しながら、対応をするのだそうです。一般的には泌尿器科の担当になります。
排尿がらみの問題の時に使われる漢方薬としては「八味地黄丸」が有名です。薬局ではたとえば「ハルンケアⓇ」なんていうのが、八味地黄丸とほぼ同じ成分を用いていると言われています。ハルンはドイツ語で尿のことですから、尿トラブルに対して、症状を緩和します、ということになっている製品名です。
夜間頻尿を相談されると、最近は、いろいろとお尋ねするようになりましたが、わりと晩酌をされている方も多い印象があります。「いや、実は原因というか、寝る前に水分をかなり摂っていて…」なんておっしゃっていて、ビールをけっこうお飲みになっておられる、とか。
若かりし頃は、それでも夜中に目が覚めて、トイレに行く、なんていうことはなかったそうですが、年齢が重なったからか、いろいろと不都合が出てくるようになられたようです。
医者としては、そりゃ、寝る前のビールをおやめになったら、とは思うのですが、ビールをお飲みになる事情もあるでしょうし…なかなか両立させるのは難しいこともあったりします。
あちらを取れば、こちらが立たない、というのをどうやって都合をつけるか、というのは、これは、医学では誰も教えてくれないところだよなあ…と改めて思うところです。