寝不足の問題点

世界的に見ても、日本人の睡眠時間というのは、ずいぶん短いのだそうです。OECDの11カ国で比較するといちばん短いそうで、平均が、女性が435分、男性が448分なのだそうです。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/html/column/clm_01.html
生活時間の国際比較(男女共同参画白書、令和5年度版 コラム1)より。
日本が誇るクールジャパンのアニメ観賞とか、そういうものに費やされる時間…ってことなんでしょうかしら?
どうにも違う気がします…。ともかく、睡眠時間が短い。平均で7時間半、ってことになってます。グラフで見ると、日本と韓国を除いては、みんな8時間を超えた睡眠時間です。
あれ?7時間半?そんなに短くなさそうだぞ…って思ってしまったのですが。それではいけません。いや、診療していると「睡眠時間は4時間です」とかっていう方がざらにいらっしゃいます。「仕事が終わって帰宅してから、翌朝出勤するまでの『自宅滞在時間』がそもそも7時間ありません」という方もおられました。その間に、食事もしなければならないわけですから、7時間睡眠もはるか彼方になってしまいます。早朝から夜まで仕事で拘束されていて、さらに通勤時間が片道2時間…とかっていうと、本当に可処分時間がどんどん短くなります。
睡眠不足は漢方でいうところの「血」の産生を阻害しますので、「血虚」の症状が強く出てきがちになります。また、「血虚」は不眠の原因になりますので、ここでどんどん不眠と血虚の悪循環に陥りがちです。
単純に血虚で不眠、だけではなく、睡眠障害がなくても、単純に忙しくて夜に寝る時間が遅い…とか、勤務の都合で寝る時間が不規則…など、さまざまな理由で、寝不足になることがあります。
深夜勤務をなさっている方はご存じでしょうけれど、寝不足が重なると、血圧が上がったりすることもしばしばあると言われています。なので、深夜勤務の方は、雇用者が半年に1回の健康診断を受けさせるように、というかたちのルールがあり、血圧測定などを行っています。
さて。そんな寝不足の問題点ですが、他にもあります。
それは…。
「寝不足だと太る」あるいは「痩せにくくなる」です。
どうしてそんなことが起こるのか、ちょっと雑な考察をしてみました。
ヒトの身体は20−30万年くらい前にホモサピエンスとして出現してから、大きくは変わっていません。うーん…本当か?とは思いますが、まあそんなに変わっていない、と思ってください。
もともと睡眠時間はあまり摂っていなかったかもしれません。ゆっくり眠れるような安全な場所ばかりでもなかったでしょうし。
とはいえ、睡眠時間が短い状態が続くと、身体は「えらいこっちゃぞ」と認識するんだろうと思います。つまり、外界ではなにか大変なことが起こっている。…ということは、身体として、備えねばならない、って考えるのではないでしょうか。
じゃあ、身体が「備える」って、どういう風に?って考えた時に、できることはわりと限られています。
そのできる備えのひとつは「身体にエネルギーを蓄える」ということ。
なので、食欲が増進したり、エネルギー効率が良くなったり、あるいは吸収率が高まったり、そして、脂肪を減らしにくくなったり、するのだろうと思います。
どれも、ひとつずつはさほど大きなことではありませんが、きたるべき、「えらいこっちゃ」の状況に備えるために、身体が頑張っている証拠です。
さて。
そんな備えを頑張る時に、食物の供給が減ったらどうなるでしょうか?…つまり、「ダイエットするので、食事制限をします」ということを頭で決めたとして。身体は…?
「ますますこれは本格的に飢餓の状態が来るに違いない!」って、ますます食欲を亢進させたり、あるいはカロリーが少しでも身体に残るように頑張るわけです。
そりゃ、そんな緊急事態の状況で、痩せる、なんていうことは許されませんよねえ。
…と、どこまで本当なのかわかりません(なんの科学的根拠もありません…にしむらの妄想です…)が、睡眠不足だと、減量はとても難しくなります。
くれぐれもまずはご自身の身体に「安全で、安寧な場所にいるのだよ」ということをわかりやすく伝えて頂くところから、はじめて頂きたいと思います。
そのためには「しっかり眠る」とか、「ゆっくり、時間をかけて食事をする」ということが大事なのだろうと思います。