師匠に学んだこと

いちばん最初の師匠、大村雄一(なむごんべえ)氏の話は、以前ちらっとだけ書いたことがありました。

いちばん最初の「師匠」のこと

医者になるための教育訓練、っていうのは、まずは医学部の学部教育があります。それから、「卒後教育」って呼ばれる臨床研修の制度や、その先の自己研鑽が様々に含まれま…

わたしが出会った時には、診察(触診のみ)をし、自家製の漢方処方「孔雀湯」というのを処方していました。「上薬を五十六種類混ぜて作っているのだ」と聞いた記憶があります。すでに普通の漢方医であることをやめておられて、「行医(ぎょうい)」と名乗っておられました。

診察室で待っているのではなくて、行商のように病気のひとを見つけに出かける、というような話でした。

そして、わりとあちこちで健康を保つための方法、ということで講演をしていました。

「触診は即ち治療である」という話は、ここで聞いたのがはじめだったと思います。

悪いところはおさえると痛いのだから、そういうところを揉んでほぐしましょう、自分でもできるのだから、あちこち、しっかり触診しつつ、治してゆけば良い、という話だったと思います。

そんな師匠の後ろにくっついて、いろいろな場所に連れて行って頂いたのでした。

治療家の方、自然食品のレストラン、健康関係のセミナーなどもあったでしょうか。マクロビオティックの関係の方とご縁を頂いたのも、この師匠の繋がりだったと思います。

個別のこととか、細かいことをいろいろと手取り足取り…という方ではありませんでした。

わたしの大好きなファンタジー小説『ゲド戦記』の中には、主人公が老練の魔術師について歩く時の会話があります。

「ねえ、なにか教えてよ」と言う主人公ハイタカに、師オジオンは「レッスンはもうはじまっている」と答えます。

師の背中をみつつ、歩くこと、そこらの生き物のあり方に目をこらし、耳をすますこと。

そのような「あり方」をいちばん最初に、無垢な状態で学ぶ機会があった、というのは、わたしにとって、本当にありがたいことだったのだと、折に触れて思い出します。