心の傷を癒すということ

1995年1月17日の未明、兵庫県を中心として、大きな地震がありました。

ちょうど、30年前の話になります。

当時、神戸大学の精神科教室におられた、精神科医の安克昌氏が、日々書かれた文章が、本になり、そして、その後、映画になりました。

「心の傷」あるいは「トラウマ」「PTSD」、そして「心のケア」というような言葉・概念が、一般に知られるようになったのは、氏の活躍も大きかったのだろうと思います。

本はサントリーの学芸賞を受賞しておられます。その後テレビドラマや映画も作られました。映画を拝見しましたが、本当に引き込まれる、しかもいろいろと考えることがある、そういう良いものでした。

氏は、2000年に39歳の若さで亡くなっています(映画ではそこまでの描写がされていました)。

氏の名前を検索すると、わりと最近のニュース記事がひっかかりました。

「兄の思い継ぎ被災者に寄り添う 心のケア先駆者の弟、震災30年描く映画が17日公開」

弟さんが、震災から30年を機に、映画を作られた、という報道でした。記事によると、今日からの公開だそうです。

そういえば、わたしが訪問していた、フィリピンの地域は、ピナツボ山の噴火から避難してきた方が暮らしていた場所でした。こちらも、本当に大きな自然災害であったと聞いています。生活の変化で体調を崩された方もたくさんいらっしゃったそうですが、これをきっかけにして、また人とひととの繋がりや関係が変わってきた、ということもあったのだそうです。

大きな自然災害が、なにも無いまま、平穏に過ごせるのが一番ではありますが、起きてしまった出来事を、ひとびとがどう生きて、その経験をどう、糧にしてゆくのか、というのは、とても大事なことなのだろうと思います。

医療の文脈で言うなら、大きな自然災害とは比べられませんが、ひとり、一人の体調不良や、病気の経験を、上手に糧にしていただけたら、と、そのように思うところはありますし、糧にしてゆくことのお手伝いができたら、と思っています。