更年期におこること
更年期障害って、本当にたくさんの症状が含まれています。更年期障害については、以前も書いたのですが。まあ大事な病態なので、何度でも繰り返しても良いか、と思い、あらためて執筆しています。
更年期障害の症状として、有名なところで言うと「ホットフラッシュ」とか「倦怠感」「疲労」みたいなものもありますけれど、「アリが足を這うような感じ…蟻走感」とか「関節痛」っていうのも、更年期障害の症状の中に含まれます。ざっと、更年期障害の症状を数えると、100ほどに数え上げられるのだ、とかいう説もあるようで、そりゃそれだけ雑多な症状を全部ひとつの疾患概念に押し込めるのは、とても無理があるよねえ…って思います。
しばしば「不定愁訴」って呼ばれます。この不定愁訴、って言葉がやっぱり、あまり良い感じを持ちづらいですが、不定ってどういうことなのだろうか、って考えていました。これについては、先日書いた通り、「医師が、その訴えの原因を定位することができなかった」という意味で理解するのが良さそうです。
この、更年期の時期に、どうしてそういう様々な症状が出てくるか、って話なのですが、これについては、わたしは「子育て支援金」というたとえ話で理解していただくのが一番わかりやすいのではないか、と思っています。
つまり、生殖年齢にある女性は、妊娠・出産・育児のために、頑張れるホルモンが分泌されています。いわゆる女性ホルモンである、エストロゲンがこれに該当します。これがいつまでも分泌されていたら、割としあわせ…なはずなのですが、あまりエストロゲンが多いと、乳癌や、子宮体癌が増えることが知られていますので、ほどほどにしなければなりません。
子育て中は多少無理してでも、がんばらなければならないことも多いですから、無理がきくように、このエストロゲンが若い女性の身体を支えてくれているわけです。あたかも、子育て支援金のようなものです。
これを当て込んで、体力の借金経営をしていると、だんだん、返済が厳しくなってきます。と、更年期になるとこの「子育て支援金」が、そろそろ子どもも大きくなっただろうし、良いよね?ってことで、「打ち切り」になる、と思ってください。
それまで、体力的に無理をして、借金を抱えているような生活をしていると、ここに補助金が入らなくなると、一気にコゲつきます。
更年期障害が、妊娠・出産・育児の時期に大変だった場合はよりつらくなる傾向がある、ということの理由は、これでなんとなくご理解いただけるのではないか、と思います。
じゃあ、漢方で、その辺、どうしたら良いのか?って話ですが、漢方薬で、100種類もある、という症状全てに効く、なんて処方はありません。が、そもそも、無理が響いている、ということを納得していただいたら、次は、消耗した体力をどうやって取り戻していくか、という話になります。
それは、たくさんの「元気になる」漢方薬がありますので、それらの中から選ぶことができそうです。ちょっと遠回りですが、ご自身が元気になっていくことができたら、更年期障害の様々な症状は軽くなっていくはずです。
それって、本末転倒じゃないの?っておっしゃるかもしれませんが、まあどちらにしても、ご自身の地力をあげておくことは大事です。もちろん、更年期のお年頃には、他の内科疾患の発症も増えてきますので、そういうものがないかどうか、を確認しておくのは大事なことですが、いずれにせよ、更年期の時期は、今までの人生の精算に近いことが起こっているのだろうと思います。
そうやって、今までの「子ども優先」だった人生をここで一区切りつけていただいて、あとは自分のために自分の体力と時間を使うようにして頂きたい。そんな切り換えの時期を、更年期と呼ぶのだとわたしは考えています。