更年期はなぜしんどくなるのか

更年期だからといって、皆がしんどくなるわけではありません。三砂ちづる氏は、かつて「もうちょっと、更年期を穏やかに過ごした、という話を伝える人が増えても良い」という言い方をしていました。
更年期、と、更年期障害、とは別の概念ですが、日常で口にされる「コウネンキ」って言葉は、つまり「更年期障害」のことを話していることが多いわけで、その分、この言葉にはネガティブなイメージがつきまとうわけです。
更年期:「閉経の前5年・後5年の期間のこと」
更年期障害:「更年期に出現する様々な体調不良によって、生活に支障をきたしている状態のこと」
まあ、クリニックで仕事をしていたり、あるいはお困りごとの相談を聞いていたりすると、「更年期でしんどい」ということはしばしばお聞きすることになります。
そういえば、昔「妄想というのは、どうして訴える本人が不幸なものばかりなのだろうか?」って大学の(教養の)授業で投げかけられたことがありました。
まだ医学部に入っていなかった?当時のわたしは、少し考えて、「そりゃ、幸せな妄想だったら、別に誰かに受け止めて貰わなくても良いからじゃないですか?」って返事したように記憶しています。
幸せな妄想であれば、本当にひとりでニヤニヤしていたら良いのですから。人生に困らなければ訴えにはなりませんよねえ。
更年期の話をしているのでした。
穏やかに過ごした。健康問題がなにも無かった、というのは、幸せなことで、それを言説として残しておくことも大事なのだろうと思います。
とはいえ、話題になる程度には、しんどい方も多いわけです。
なぜしんどい方がおられるのか…?という話ですが、やっぱりこの時期、いろいろがいっぺんに重なるから、っていうのは大きい気がします。
ヒトを除くと、ほとんどの生き物が、妊娠出産(場合によっては育児)が終わった段階で、寿命なのです。
(はじめの鍼灸治療院のウェブサイトに「更年期とホルモンのはたらき」と題してそんな文章を掲載していただいていたのでした。)
なので、生き物の身体としては、いったん、設計上、耐用年数が来ているのかもしれません。
加えて、現代社会における更年期の女性は、たいてい、「老親の介護」と「思春期の子供の面倒を見ること」と、加えて「職場での責任が重たくなってきている」というような、タスクが一杯!になっています。
仕事は、それなりに区切りがあって、職場を離れたら忘れられることも多いかもしれませんが、家庭のゴタゴタは、わりと休みなしで対応をせまられます。
老親の介護を同居しながら…となると、夜寝ている時間でさえ、気を抜けません。
こういう、神経を緊張させることが続くと、そりゃ頭も使い続けることになりますので、熱くなります。
頭の熱を、閉経までは月経血に載せて、排熱することができましたが、それが出来なくなると、やっぱり熱が残るようになりますから、汗をかいてみたり、熱くなってみたりします。
そして、頭の使い過ぎで、気が昇りますから、胃腸の調子はやっぱり不調になります。
いろいろ大変な時期ですが、それぞれに区切りをつけて、しっかりお休みするタイミングを確保して頂きたいところです。