漢方と生薬のこと

漢方の塗り薬「紫雲膏」を作っているときの写真。自家用ですのでお料理みたいな雰囲気です。

漢方薬って、いろいろな生薬が混ざってできています。

そんな処方が120種類くらい、あります。

ざっくり120種類くらい、って書きましたけれど、実は古い漢方の本なんかを開いていると、今の漢方薬には無い組み合わせもいっぱいありますし、当時は毎回、原材料の生薬を混ぜ合わせるところからやっていましたので、ちょっとこの人にはこの生薬を増やしておこう、みたいなことだってありました。まさにさじ加減っていうのはこういうことを言うんだ、って聞いて、ほおお、と声がでたのは、若いころの講義の思い出です。

生薬っていうのは、漢方の原材料になっているもので、多くの場合は、何らかの薬草である植物の一部分(根とか樹皮とか、あるいは実とか葉とか)を採ってきて、乾燥させたもの、っていうことになりますが、これを細かく刻んだりして、薬として使います。ちなみに、植物をもとにした生薬が多いですが、一部鉱物とか、あるいは動物由来の生薬っていうのもあります。たとえば有名な話としてはサイの角。これがけっこう良い薬になっていました。日本でもものすごい高価な薬扱いされていたらしいです。

そのせいで、サイは乱獲され、絶滅の危機に瀕してしまいました。現在生きているサイは、全て、レンジャーが、角の部分に毒を詰めているそうで、漢方薬としては使い物にならないようにして、サイのいのちを守っているのだそうです。

角と言えば、シカの角もけっこう良い漢方薬になります。奈良公園のシカなんかは、毎年、角を切るので、あれが生薬として出回れば、けっこうな量になるのでしょうけれど、いろいろ事情があって、そうなってはいないようです。

よく効く生薬って、やっぱりみんなが買い求めるので、品薄になったり、あるいは偽物が混ざったり、ということがあるそうで、なかなか大変な分野です。

今はアメリカでも漢方薬…というか中薬がブームになっているらしく、中国本土でも消費量が増えていることもあって、どんどん価格が上がってきているようです。

まだまだ、栽培ができないものも多いですし、限りのある資源です。必要な方に必要なだけ届くように、無駄にならないように、と心がけています。