自転車にのれるようにする方法

少し前の休日に、ぶらぶらと街中を歩いていたら、小さいお子さんが親御さんたちと、自転車の練習をしている光景を見かけました。

自転車にのれるようになるのって結構難しいのです。
その一方で、いちど自転車にのることを覚えると、身体の記憶ですから、しばらくのっていないまま、時間が経っていても、それなりに上手にのることが出来る、というのも、大変興味深い現象です。

昔、数学者の先生が「いちど、解き方を教えてもらった問題は、二度と解けなくなる」って言い方をされていました。
ちゃんと解法を覚えている(教えてもらった)から、答えは出せるようになります。でも、それは「自分自身の力で、解法を見出す」という作業をしていないわけです。
そして、一度「これが正解」と覚えてしまったら、それが邪魔をしてしまいます。
まっさらな心で取り組んで、自分自身で正解までたどり着く、ということは、二度とあり得ない、というわけです。
じゃあ、全部独力で解決するのが良いのか?って話になると、これまた難しい。
数学の研究、って、あまり研究費がかからないので、時々、完全に独立して研究されている方があるのだそうです。
あるとき、そういう方が、大変大真面目に、「偉大な数学の定式を見つけた!」ということで記者会見?をしたのだそうですが、その時に呈示されたものが「連立方程式の解法」だった、という残念なエピソードも聞かせていただきました。
ひとりのひとが、自分のあたまだけで考え出すこと程度では、よほどの天才でないかぎり、そんなに遠くにはたどり着かない、ということなのかもしれません。

ええと、自転車の話でしたねえ。

自転車、って、一度っきりしか「のれるようになる」タイミングがありません。だいたい皆さん、小さい頃にそれを覚えますから、「どうやってのれるようになったのか」をきっちり分析できないままになります。
ですので、自転車の練習の理論って、なかなか、成立しづらい。

成立しづらい…の、ですが、わたしは昔、自転車の練習について、コツを聞いたことがありました。
たしか、甲野善紀氏が、講習会で話をされていたのだと思います。
甲野善紀氏は、その話を、岩城正夫先生からうかがったのだとか。岩城先生は、黒曜石を割ってヤジリをつくる…のを、ビールの空き瓶のガラスでなさったり、きりもみ式の火起こしの効率的な方法を見出したり、という形で、ご自身の体験をもって、技術とはどのようなものか、を探究されてきた方だそうです。『寄生獣』などの漫画作家であられる、岩明均氏は、岩城先生のご子息でいらっしゃるのだ、という話も聞きました。

あまりもったいぶっていても仕方ありません。
自転車にのれるようにするコツ。

「まず、ペダルを外します」

え?自転車にのろうとしたら、ペダル、ありますよねえ。あれに足をかけて…漕ぐわけですけれど…?
そこを?外す?

もう20年以上前に、我が家の長女に自転車を買ったとき。あれは中古の自転車でした。自転車やさんで、「ペダルを外しておいてください」ってお願いしたのを覚えています。
店主さんに、何度か聞き返されました。
「またそのうち、お願いして付けていただきますが、いったん、まずはペダルを外してください」ってお願いして、すごく怪訝な顔をされましたが、それで、ペダルを外した自転車を、子どもにわたしたのでした。

この、ペダルの無い自転車にしばらくのってもらっていました。またがって足で蹴っているうちに、二輪車のバランスを覚えます。
この、バランスを覚える前に「ペダルを漕ぐ」ということを頑張ってやろうとすると、すごく力を入れることになりますので、バランスを取ることが難しくなってしまうわけです。
なので、バランスを取ることと、ペダルを漕ぐこととを、それぞれ別に分解して覚える、というために、いちどペダルを外す、というステップをいれたのでした。

補助輪付きの自転車、というのもあります。こちらは、「バランスを取る」ことを後回しにして、「ペダルを漕ぐ」ということを大事にした練習方法なのだろうと思います。こちらはこちらで、大事なのだと思います。

長女の自転車に、ペダルをつけてもらう、というのをいつお願いしたのか、覚えていません。ひょっとすると、妻がつけてもらいに行ったのかもしれません。自転車やさんがどんな顔をされていたのでしょうか…。その辺、あまりにあやふやなまま、遠い昔になってしまいました。

最近は、子供用ののりものとして、ペダルとチェーンの無い、二輪車があったりもします。
そういえば、二人目からは、幼稚園などでそういうのりもので遊んでいたのでしょうか。気がついたらいつの間にか自転車を漕いでいたのでした。

まあ、子どもの運動神経、ってけっこうすごいですので、そんな面倒なことしないでも、さっさと覚えるよ、と言われたらそこまでの話ではあるのですが。