補助金狂騒

先日、クリニックに、営業の電話が来ているのを受けました。
「今、京都では、中小企業向けの支援として、補助金の制度があるんです」
おお。中小企業向けの補助金ですと。
そういえば、開業する時に、電子カルテあたりが、中小企業DXの補助金対象になる…かも知れない、なんていう話がありましたっけ。
結局、他の業界と競合すると、医療関係は、補助金が認定されづらい、という傾向があるそうで、申請にかかる手間に見あわない…と考えて、諦めましたが。

今回の話は、エアコンの入れ替えをしませんか、というお誘いでした。
うーん。ウチのクリニック、こないだ新しく改装したばかりなんですよ、ねえ…。
「あ、そうでしたか…それは失礼しました…」なんていう話で、通り過ぎました。

補助金の話関連で、電子カルテの話…といえば、ちょっと前から、ちょこちょこ、電子カルテの機能が増えたので、それを導入しますか?なんていうお声かけがちょこちょことあります。
何とかかんとかのプログラムが適用になりますが、それを導入しますか?とか、そういう形の募集があって、申し込むわけです。
先日申し込んだ機能追加については、ベンダーさんから電話がありました。
「なんでも、補助金の交付にかかる申請の受付締切が早まって…明日までなんですが!」という話でした。
うーん…必要書類が揃っていないんですよねえ…なんて話をしていたのですが、結局、申請期限が前倒しになってしまっていました。やっぱり、慌ててその日に申請せねばならなかったようです。
申請しそびれてしまいました。

ベンダーさんが悪いわけでもないのですけれど、ちょっとお財布的には痛い話になってしまいました。

こういう機能追加の値段設定が、本当に興味深いわけです。
補助金の上限額が「かかったコストのうちの一部(割合)」と「金額いくら」のうちの、低い方の金額、ということになっています。たとえば、「かかったコストの半分」と、「2万円」のどちらか、というような話になると、ベンダーさんが提供している「お見積もり」はたいてい、「4万円」というような数字が呈示されます。
それって、補助金ギリギリの値段を設定してるんだよねえ…?って思います。
でもって「補助金がありますので、値段は高めですが、そんなにコストはさほどかからずに改修できます!」っていう形で営業になるわけです。

電子カルテと医療DXの流れとの中で、必要になるだろうから、ということで機能を追加するわけですが…。

翻って考えてみると、医療というものも、「正規の価格」と、「患者さんが支払う金額」に大きな差がある、と言えます。

ここには医療保険が介在するわけですから、「補助金」とはちょっと違いますけれど、まあ、自分の財布じゃないところから経済的な援助がある、という意味では補助金みたいなものなのかもしれません。

少し前に、トランプ政権が介入したという、ベネズエラの経済では、補助金を上乗せして購入した小麦を、国内でダンピング販売していた…という話が紹介されていました。

近隣諸国から、小麦粉を10ドルないし20ドルで仕入れていたそうですが、それを国内で3ドルで販売していたのだとか。
国内の小麦粉生産のコスト(5ドル)を下回る金額で…ということで、国内では競争できないから、という事情もあり、小麦粉の生産を諦めたようです。
あまりにも不自然な補助金の使い方に、汚職などがからまり(実際にモノを仕入れずに数字だけが動く)、また、近隣諸国に密輸すれば仕入れ値より高く(10ドルくらいで)売れる、ということもあり、密輸が横行する、などということも重なって、国内に必要な量の小麦粉が供給されなくなった…ということが起こっていたのだそうです。
極端な価格統制と、それにつぎ込まれる補助金、という図式が続いたことで、かなり悲惨な状況になってしまったようです。

とはいえ、いったん価格のダンピングをしてしまうと、そこからあらためて「適正な価格に値上げ」というのが難しい、ということもあります。

日本でもコメの価格が値上がりしたのは記憶に新しいですが、コメ農家にその恩恵があるかどうか、というところはちょっと難しい、という話を聞いたこともあります。今まで長年にわたり、価格維持、という名のダンピングを受けていた、とも言えるのかも知れませんから、農家の方にも、しっかり経済的な裏付けがあってほしいところですが。

公定価格での取引によって、適正な値上げが制限されているもの、って、他にもあったりします。
保険医療における、診察諸費用もそれに該当します。そして、3割負担なり、2割負担、ということで、さらに金額についてもダンピングがなされているのが、医療費の個人負担分についての支払いです。

そして、医療費については、高齢者の割合が増加したことなどで、資金的な不安が増大している、という点でも、似ているのかもしれません。

このあたり、本当に難しい話がいっぱいありますので、いっぺんに解決できるような話ではないのですが、補助金というものをあまり当て込まないで済むような、そんな姿勢が重要になってくるのかも知れない、と思います。