触診でわかること

クリニックに来てくださる方は、それぞれ、お困りごとがある方で、初診の時にはじっくりお話を伺いつつ、身体を拝見するわけです。
ですが、初回で全部のことがわかる、というわけでもありません。
少し時間が経ってから、「ああ！」というような発見があることも時々あります。

わたしは、ボディートーク、という「こころとからだはつながっている」と捉える身体へのアプローチをずいぶんと長いこと学んで来ましたので、筋肉の緊張は、なんらかのこころの緊張が引き起こしている可能性、というものを考えます。

ボディートーク

ブログアーカイブから、「ボディートーク」キーワードの記事一覧です。 ボディートーク、という、ごく似た名前で、別団体がありますので、ご注意くださいませ。にしむらが…

にしむら漢方内科クリニック

もちろん、割合と単純な「身体の局所を酷使したことによる過労と緊張」というのもありますので、全てが心から来ている、というものでもありません。

そういえば、以前いらっしゃった方。
みぞおちの部分が痛む、ということでお越しになりました。大抵の場合は、ここの痛み…あるいは緊張、というのは、ざっくりと「ストレス」があると出てきやすくなります。
が、お尋ねしても、思い当たるストレスが、なにも無い…ということで、わたしも少し頭のなかを「ハテナ？」としてお腹を拝見したのですが。
どうやら、筋がなんだか突っ張っていたようで、お腹の触診と按腹をしている間に緩み、みぞおちの部分の違和感も痛みも消えた、とのことでした。
身体に出てきた症状の全てを心の問題としてとらえる、というのも、やはり言い過ぎなんだろうなあ…と思ったところです。

とはいえ、「こころの問題とつながっているような緊張」…と原理的な説明をするのはあまり良くなさそうです。

ちょっと言い直します。

「この部分の緊張は…という説明が、こころの問題や、あるいは思い当たるストレスとの関係として、腑に落ちる説明がされたとき」。
腑に落ちる、というのは、その説明になんらかの説得力とか、リアリティがあった場合、ということになります。

リアルとリアリティは違うのだ、としばしば、精神科医の師匠は口にしていました。

リアル、っていうのは「実際に起こったこと」。
リアリティ、っていうのは「あたかも実際に起こっているかのように感じられること」です。

リアルじゃなくてもリアリティが出ることがあるのだ、というのは、本当に興味深い話です。なので、身体を読んで、そこに意味づけをするとき、わたしたちは、その行為を慎重にせねばなりません。

とはいえ。

ある種のリアリティをもって、物語が成立した時には、筋肉の緊張は緩み始める、ということがあります。

それが「歴史的に事実であったかどうか」というよりは、ご本人にとって、「リアリティのある物語であるかどうか」の方が影響は大きいのかもしれません。なので、他のひとには荒唐無稽な物語であったとしても、物語に納得があれば、有効、ということだってあります。

これも全ての方に、同じように、というわけにはいきませんので、たまにある、まぐれ当たりみたいなものではあるのですが。