院長のバーチャル講義1(解剖生理学・腟の常在菌)
院長は、2024年の8月まで、看護師をめざしている学生さんたちに向けて、女性特有の疾患についての講義を担当していました。
看護師さんたち向け、ですので、ちょっと専門的にはなるのですが、一般の方でも、それなりに必要な情報が混ざっているかもしれませんので、一部、採録して、ブログにしていこうと思います。
ということで、簡単な解剖生理学の話から。
産婦人科の専門は、おもに子宮と、それから(子宮の)付属器と呼ばれる卵巣・卵管の部分になります。子宮は腟を介して外陰部に接続しており、また、卵管を通じて、腹腔内に繋がっています。(なので、そんなに頻繁に起こることではありませんが、場合によっては、腟から入ってきた菌がお腹の中に感染を引き起こす、なんていうこともあったりします)
腟には、常在菌(通常の状態として、そこに存在している菌)として古い言い方をすると「デーデルライン桿菌」最近では「ラクトバチルス」なんて呼ばれ方をしている乳酸菌が多く存在して、これが乳酸菌を分泌して、腟内の環境を酸性にすることで他の菌が定着するのを防いでいます。
また、カンジダと呼ばれる真菌も常在菌として存在します。ラクトバチルスとの関係が変化して、カンジダが過剰に増殖すると、かゆみがでてきたりして、カンジダ性腟炎と呼ばれる状態になります。この場合はカンジダに対して有効な抗真菌薬を投与することで、症状改善をはかります。
腟内の細菌については、腟スワブの培養を行うことで、ある程度は知られていましたが、近年、腸内細菌叢を調査するのと同様の手法を用いて、腟内の細菌叢を調査することが行われました。まだしっかりとした結論には到達していませんが、腟内の細菌はある程度種類が「少ない」方が健全な状態である、というような結論になりつつあるようです。
腸の常在菌が、多様であることが重要とされているのとは対照的な結果になってきていて、お近くではあるのに、大きな違いがあるんだなあ、と思ったところでした。