おなかのこと
狂歌で「はらにいちもつ、手ににもつ」って、そういうカルタ?をどこかで見た覚えがあります。ニコニコとした着物で色白、糸目の女性が、お土産を持っているような絵が描かれていて、上の句に「京都の女性は…」みたいな感じの言葉が入っていたように思うのですが、グーグル先生にお尋ねしても、ご存知ないようで、いったいどこで見たのか、夢の中だったのだろうか、なんてことを時折思います。
「痛くもない腹を探られる」という表現がありますけれど、腹診というのは、日本の漢方診療ではとても重要視されていますから、お腹に症状があるか、ないか、ということは別にして、腹診をすることが多いのは事実です。
画像はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E8%A8%BA 「腹診」より
お腹はいろいろと大事な場所です。
わたしは小児科の漢方についての専門ではありませんが、漢方をやっておられる、とある先生によると、「小児科の漢方は、小建中湯を出しておいたらほとんどそれで良い」のだそうです。まあなんと乱暴な…と思いましたが、建中湯というのは、お腹(中)を「建て直す」処方ですから、小児期のお腹の状態をしっかりさせてゆくことがとても大事、というのはわかります。
何でも食べられて、どこでも眠れて、元気である、というのが、子育ての目標のひとつとして挙げられることがありますが、身体の根っこはやはり、お腹ということになりそうです。
漢方の理論で言うなら、胃腸をあらわすのは「脾」と「胃」ということになっています。この「脾胃」は五行でいうと「土」になります。この土を大事にする=胃腸をしっかり健全な形に育てていく、という方針を前面に打ち立てた流派が「補土派」と呼ばれる一派で、「李東垣」がその代表とされています。
李東垣は1200年前後に中国で活躍された漢方医で、日本でも割と有名な「補中益気湯」は、この方の書物が由来とされているのだそうです。他にも「半夏白朮天麻湯」という処方も、この方によるのだそうです。
この、胃腸の様子を漢方的に考える、というのは、それなりにやって来たのですが、どうやら、最近の西洋医学では、「腸内細菌叢」というのが話題のひとつになっているらしいです。そして、この腸内細菌叢、というのは、ある程度、幼少期に育つもの、らしいのですが、これの状況によって、特定の病気になりやすい、なりにくい、みたいなこともあるらしいです。
漢方薬の処方によっては、また腸内細菌叢の様子が変わることがあるらしいですし、「土」の中の微生物、と考えると、これはこれでとても興味深い符合になっている気がします。