かには甲羅に似せて穴を掘る

かにと言えばこちら。この方は穴は掘りませんが…

クリニックの診療をしながら、休診日の水曜日と木曜日は、出稼ぎを続けています。
まだ、外来診療一本だけでは経営が安定しませんので、しばらくはこういう生活が続くかなあ、などと考えています。

主な出稼ぎ先での仕事は「健康診断」の内科診察です。京都府内や滋賀県内の事業所に訪問して、現地で健康診断を行う、という形の「移動診療所」の扱いになります。それぞれ事業所さんの雰囲気が違って、健診に入らせて頂くたびに興味深く感じています。

さて、事業所さんでの健診という形になりますと、たいていは、診察室、というものがありません。衝立を組み合わせたりして、臨時の診察場所を設営することになります。

この衝立も持ち込みになります。心電図の検査や腹囲計測などでも使用しますから、数に制限があります。なるべく少ない数の衝立で、上手に設営したいところですが、それぞれの事業所さんの空間配置によっても、苦労することがあったりして、毎回ちょっとずつ、形が違います。

扉を設置しているわけではありませんので、少し曲がった通路を入口に繋げて、奥が覗き込めないように目隠しにする工夫をしています。この通路も、日によって、多少狭かったり、広かったりします。

もちろん、もともとのお部屋の広さなどもその通路の広さに影響するのですが、個人的には、設営される方の「これなら通ることが出来る」という感覚に影響しているのではないか、と想像しています。

つまり、設営される方がスリムな方だと、通路が狭くなりがち、なのかも知れません。

もちろん、必ず、ではありません。とはいえ、もともと限られた空間と、かぎられた衝立の数を上手に使おうとすると、通路は狭い方が、奥が見えづらいですから、良いのです。

ところが。受診される方の中には、大柄なかたもいらっしゃいます。ほとんどの方は、なんとか上手に通路を通ってくださるのですが、まれに、衝立を押しのける形で、通路を変形される方があります。

やっぱり通路、今日は狭かったのね…などと思うのですが、このあたり、いちいち寸法をはかっているわけでもありませんので、どうしても自分自身が「狭い」と感じるかどうか、というあたりが基準になりがちです。

話は変わりますが、今月は参議院の選挙がありました。いろいろな候補者が、選挙の公約を掲げて、いろいろと議論をされていたように聞いています。

何年か前は公約じゃなくて、マニフェストとか言ってたような気もしますが…。

国政選挙で、当選したとて、与党ならともかく、野党の公約が実現した、なんていうことはほとんどありませんから、野党の方の公約なんていうのは、ずいぶん空手形も良いところなんでしょうけれど…。

とはいえ、その政党が、あるいはその候補者が何を考えているか、というのは、多少は見え隠れするわけです。

医療と社会保障についての話題も取り上げられていたようですが、なかなか難しい話だよなあ、と思っていました。

クリニックを経営していると、診療費の会計がどうしても発生します。釣り銭が足りないとか、一日の終わりにレジのお金があわないとか、そういう悩みもけっこうあります。いっそのこと、完全にキャッシュレスにしてしまったらどうなんだろうか?とも考えたりします。が、じつは診療所では、現金の取り扱いを必ずできるようにしておかねばなりません。

これは「どのような人も、受診の対象になるように」という意味合いがあるようです。つまり、キャッシュレス決済をしようとするなら、カードを持っているとか、あるいはスマホを使えるとか、そういう条件が何らかの形で必要になります。それらの条件を満たせないまま、現金での支払いしか出来ない方、というのがごく一部でもいらっしゃるなら、その方を排除することになるので…という考え方です。

ごくごく少数の例外的にでも起こりうる状況を、公益性の高い診療所というところは、考慮にいれねばならない、というのが、現在の医療制度の中では、常に求められるポイントです。病院になれば、さらに間口を拡げる必要があったりしそうです。

ところが、こうした「例外的なものごと」に配慮すると、コストが嵩みます。例外的なものごとを排除することで、システムの維持費は軽くなることもしばしばあります。いちぶの政治家の方がおっしゃっている主張は、そのような風に見受けられたりします。

そういう主張をされる方は、まわりに、お困りになっておられる方が、あまりいらっしゃらないのかもしれません。

ご自身や、ご自身のまわりの方を想像されて、ルールを設定される、あるいは制度を設計される、ということは、決して間違っているわけではありません。が、日本の国の全体を考えていただくには、より広く、「例外的なものごと」と、それに困っておられる方々への配慮が必要なのだ、ということも考えていただきたいものです。