どこもかしこも

先日、ぼんやりSNSを眺めていたら、施術関連の文章がありました。
どこがお悪いのですか?と尋ねたら「全部」って返事する受療者がおられる。
というような話でした。また別の方は「別に…」っておっしゃるのだとか。まあ「特に困っていないけれど」とおっしゃる方に施術が必要なのか?ってことを考えると夜しか眠れなくなりますので、ちょっとその辺はご容赦を頂きたいところです。
全部。って。ぜんぶですよ。あなた。
あたまのてっぺんからつまさきまで、ってやつですよ。
なんなら、ひょっとすると、「運勢」とか「気分」とかもお悪い方なのかも知れません。
そういうときに、どこから始めるか、あるいは「どこから始める」をどう同意を得るか、って話になりそうです。
健康診断のアルバイトをしていたときに、「何かお困りごとはありますか?」ってお尋ねをします。滅多にいらっしゃらないのですけれど、今までにお一人だけ「うん。あのね。お金が無いねん!」って即答された方がありました。お困りごとですよねえ。ええ。
言ってみるだけはタダ!っていう方もいらっしゃいますし、やっぱり関西人のノリなのでしょうか。
じゃあ、その方が、本当に「全部」しんどいとか「全部」不調なのか?っていうと、実際のところはそうじゃない、気がします。
最近よく話をするのですが、いろいろな不調がいっぺんに出てくる、ってそんなにありません。頭がなんとなく痛くて、でも、筋肉痛で身体を動かすのもつらくて、お腹の調子も悪くて…っていうような時に、運悪くも、タンスの角に足の小指をぶつけたりしたら、今までの不調はほとんど全部吹っ飛んでいきます。もう、全身が足の小指になってしまいますから、全身が痛い!っていうような感覚になります。
ここから、少し落ち着いてくると、痛い箇所が、全身から、片足になり、そのうち、足先になり…とゆっくり焦点が絞られてくるようになります。
なので、「全部不調」っておっしゃる方は、まだそこまで行っておられないことが多いのかもしれません。
施術調整も、時間制限がありますから、「全部の不調の中で、特に、今日はどこを優先しましょうか?」みたいな話があっても良いでしょうし、あるいは、全身をまんべんなく、浅く、という対処があってもよいのだろうと思います。
腰が痛い、とおっしゃる方でも、本当に痛かったのは、腰じゃなくて、背中、という方もあれば、股関節あたりが痛かった、という方もあります。
ひとの言葉っていうのは、やはり、ひとつの目安ですから、その言葉を受け取ってから、自分の言葉と照らし合わせる、ということが必要になります。
面倒くさい話をすると、「あなたのおっしゃる全部っていうのは、どう、全部なのでしょうか?」ってことをいちいち確認する必要があります。
ひょっとすると、ご本人が気づいていないところに、不調の根っこみたいなものが隠れていることだってあるかもしれません。
そういう不調の根っことか、ご本人が意図していないような不調を、きっちり拾い上げる、というのも、身体に触れて、施術するひとの大事な仕事だと思います。
とはいえ、「潜在的なニーズ」にばかり目を向けすぎても、それはそれで、「あの先生、話をぜんぜん聞いてくれない」というようなコミュニケーションの問題になりかねません。
このあたり、とても難しいところだなあ…と思います。