もう半分、まだ半分
一般向けに書かれた、心理学関連の本には、ちょっとした小咄みたいな話があったりします。そういう小咄のひとつで、悲観主義者と楽観主義者の違い、というものがありました。
グラスに半分ワインが残っているのを見て、 「もう半分しか残っていない」と嘆くのが悲観主義者。 「まだ半分も残っているじゃないか」と喜ぶのが楽観主義者である。
バーナード・ショーの言葉、なのだそうです。
と、言われて英語を調べてみましたが、由来は微妙な感じですねえ…。Wikipediaには、「半分空っぽですか、それとも半分みっちり入っていますか?」という見出しで解説がありました。ワインなのか、水なのか、というのもあるみたいですが。
表現や考え方を変えたところで、ワイン…あるいは水の量は変わっているわけではありません。
「いや、そもそも私はワインなんて飲まないし…」っておっしゃる方もあるかもしれません。
表現として、残っているワインの量ではなくて「もう半分も飲んでしまった」「まだ半分しか飲んでいない」という、消費した方に目を向ける言い方もあります。それぞれ、その方の心持ちが反映されているのだろうなあ、と思います。
楽しみに飲んでいるワインなら、残りが少なくなってゆくのは、どちらかというと、悲しい話題、と言えるのかもしれません。
これが「つらい症状」だったとしたら、どうでしょうか。
わたしの臨床経験からの印象では、「つらい症状」が「半分に減った」とおっしゃる方と、「まだ半分も残っている」とおっしゃる方があるように思います。まあ、症状が「半分」って、そもそも症状の量をはかるわけにもいきませんから、ものの喩えですけれど。
この時に、「症状が軽減した」方に目を向けて、喜ばれる方と、「まだ残っている症状がある」方に気持ちが向いて、かなしみが強く出る方がある、のかなあ、と思います。
できれば、軽減した方に注目して、喜んでいただきたい、とは思いますが、そう言われたから、意識したからできるようになる、というものでもなさそうで、なにか良い方策がないものだろうか、と思案しているところです。
症状が「全部」とれてしまえば、そんな議論にはならないのですが…なかなかそこまでスッキリと、というわけにはいかないこともありますもので…。