わすれ雪

京都は一昨日の夜から、雪が降りました。昨日は土曜日で診療があったので、出勤したのですが、朝から一面の銀世界で、バスもゆっくりの運転。あちこちで電車や高速道路が止まっていたそうです。
雪が降ると、音が吸収されますから、本当に静かになります。そして、雪景色は、普段の喧噪を忘れさせてくれるような心持ちになります。
多少乱雑で、片付かないものがあっても、雪が降れば、全部その中に覆い隠してしまうわけです。
わたしがまだ若い頃、『わすれ雪』という歌がラジオで流れていました。
「〽雪が降る 今日も降る 巷(ちまた)のざわめき 消して降る…♫」と、雪が覆い隠して、忘れさせてくれるように、という歌詞でした。
これって、すごく似ているなあ…と、歌を思い出しつつ雪景色を見ていました。
わたしの臨床で「今は症状を覆い隠しているだけ」という状態の方を、しばしば拝見します。
たとえば、「休日になるとお腹が痛くなる」というのは、いわば、平日は雪が積もっている風景を見ているようなもの、なのかもしれません。
月経前症候群(PMS)の方の「生理前の時期」というのが、雪がとけてなくなった状態で、その他の時期は雪が積もっているようなものでしょうし、更年期障害の方も似たような状況と言えるでしょう。
雪がとけた、その後の状況がどれだけ「乱雑」な状況なのか?というところに、個々の方の、症状の強さとか、あるいはそもそも症状が出るか、出ないか、ということが反映されるわけです。なので、雪がとけてきた時に、「ホルモン補充をして、もう一度雪を足す」という方法も、決して悪いわけではありませんが、雪の下の状況を整理し、片付けておくことが、本来の体調を整える、という意味では大事な仕事になるのだろうと思います。
こう考えていただくと、「雪がとけた」ことが、症状が表に出てくる理由にはなりますが、雪の下の状況は個々の方で千差万別であることも想像していただけると思います。
いわゆる更年期障害の方の、症状が多彩で、ものの本によると100種類以上の、と言われるゆえんは、このあたりにありそうですし、単純にホルモン剤を補充する以外の対処法が大事になってくる、ということだと思います。どんな対処法か?って訊かれたら、そりゃ漢方を使うことなどを考えてみてください、ってお返事するんですけれど。