イギリスの食事事情

イギリスはメシマズ、というのは、昔のことになった…と思っていたのですが、近年、イギリスを久しぶりに訪問された方は、「(食事の)塩っ気が少ない」ということで、改めてびっくりされるのだそうです。

一体何があったのか…?ってのを調べたら、すごい話が出てきました。

英国は国を挙げて減塩対策に取り組み、その結果10年間で心臓病の患者が減り、毎年2600億円もの医療費の削減につながったと言われています。

https://coffeedoctors.jp/news/1708

すごいですねえ。食事で摂取する塩分を減らすのに、英国人の食生活では、パンに含まれる塩分の割合が結構多かった、ということから、大手パン企業とがっぷり取り組んで「徐々に塩分濃度を下げていく」ということを国策として推進したのだそうです。

なので、その間、徐々に薄味に慣れていったイギリス国民とは異なり、久しぶりにイギリスを訪問した方には結構なショックなのだとか。

やっぱりイギリスはメシマズ?とか考えてしまいましたが…。

塩分の量を減らす、というのは、健康の維持という意味では、わりと有効なのかもしれません。実際に英国では医療費の削減につながった、という報告として出されています。

もともと、塩分を「美味しい」と感じるのは、海から離れた陸上生物が、塩分を確保しづらかった時の記憶です。昔はとっても希少で、大事だったから、摂取すると「おいしい」という報酬が(脳から)出る、というシステムが生き物の身体に備わっているわけです。が、しかし、「美味しい」を追及して、容易に手に入るようにしよう、と頑張った人類の文明が、塩を追及しすぎた、というのが現状です。つまり、現在においてはやや過剰に摂取するようになっているわけです。脂質とか糖質についても、似たような現象が起きていて、現代のいわゆる「生活習慣病」として問題視されるようになってきました。

かつてのイギリスのメシマズは、産業革命の時期に、家庭料理の文化を継承する時間的な余裕が喪失したからで、安全な料理をできる人がいなくなったことが原因なのだ、と聞きました。

イギリスの名物「フィッシュ&チップス」は、白身魚をフライにしたもの(フィッシュ)と、ジャガイモのフライ(チップス)の組み合わせですが「伝統的な」やり方は「低温でゆっくりあげる」ということになっているのだそうです。これは、フライの中まできっちりと加熱することで、食中毒を予防する、ということを最優先した結果だったのだとか。

なので、この料理(フィッシュ&チップス)は、「ベチャッとしているのが当たり前」だったのだそうです。えええ!?ベチャッとした揚げ物、ちょっと嫌なんですけれど…。

わたしがイギリスを訪問した時(平成7年ころだったと思いますので、実に30年前になります)には、パリッと揚がったフィッシュアンドチップスが(たまたま?)食べられて、その時案内してくださった現地の方が、「珍しいフィッシュ&チップスだ」と、それに感激して食べておられました。それを考えると当時、徐々にメシマズからは脱却しつつあったのだろうと思います。しかし、ただ料理下手なだけだ、と思っていたその調理方法に、理由があって、敢えてそれを選択していたとは…と、事情を知ってびっくりしました。

ものごとには、それなりの歴史と事情があるのだなあ、と改めて感じ入った話でした。

日本人の塩分摂取量も、わりと多め、と言われています。日常の中で徐々に減らしてゆくことが推奨されます(食卓で使用する塩や醤油を減らしましょう、などのかけ声がかかっています)が、なかなかこれも難しかったりします。年齢が高くなると、味覚が鈍くなる、と言われますが、場合によっては亜鉛の欠乏などによる味覚障害が隠れていることもあります。

味覚障害は亜鉛の補充で改善することもありますので、ご相談くださいませ…。