イライラの出現する理由

先日、怒りを払うこと、という話を書きました。

心理学の師匠から教えてもらった秘伝

本当にありがたいことに、わたしには、お師匠さまが、何人もいます。「節操もない」と言われると、反論のしようがないのですが。 精神科医で、心理学のことを深く教えてく…

怒りにもいろいろあります…っていう話を書きましたが、更年期の症状などにも出てくる「イライラ」っていうのが、あります。

ある方から「対象が明確である怒り」と「漠然としたイライラ」とは、別である、という話を伝え聞いたこともありますが、どこか、漠然としたイライラ、というものを、症状としておっしゃる方もいらっしゃいます。

このイライラがどこからやって来ているのか?ってことを、わたしは以前、考えたことがありました。

もちろん、こういうイライラが背景にある場合、何か腹を立てるような物事があれば、このイライラに加えた形での「対象が明確な怒り」というのが出てくるわけですけれど、まずはその前のイライラについて考えてみましょう。

結論から先に書くと、だいたいは、こういうイライラが出ておられる場合というのは、体力的にギリギリ、だとか、疲れが積み重なっている、ということが多いわけです。

じゃあ、なぜ、そういう疲れている時にひとはイライラするのか?ということになりますが、ここでいきなり、人類の歴史を振り返ってみることにします。

まだ人類が、獰猛な野生動物(マンモスとか、サーベルタイガーとか)と、しのぎを削っている時代のことです。どうしても危ない状況っていうのがあったりします。その時にさっさと諦める、というのもひとつの人生ではありますけれど、やっぱり生き残るのに頑張りたいわけです。いわゆる「火事場の馬鹿力」です。この火事場の馬鹿力を発揮するホルモンが、アドレナリン(副腎皮質ホルモン)になるわけです。

当時は、短ければ数時間、長くても数日でこの「火事場の馬鹿力」を使ったあとの結果が判明するような環境だったのだろうと思います。つまり、うまいこと逃げ延びて生きることができるか、あるいはどこかで命を落とすか、というような過酷なものだったかもしれません。

平和で快適な現代社会においては、そんなに、命がけになるような場面は、あまり、ありません。が、この「火事場の馬鹿力」スイッチが残っているわけです。そして、ちょっと疲れて、身体が動かない、などの時に、このスイッチを「半押し」していたりするわけです。

もともと「怒り」を原動力にするようなホルモンによる非常事態を作るスイッチですから、これをうっすら押していると、うっすら「怒り」が漂うことになります。もちろん、外的に怒りを引き起こした原因があるわけではありませんので、このイライラは対象がはっきりしない形で出現してきます。

これがいわゆる「イライラ」の病態ではないかと思っています。

いちばんの対処法は、「しっかり休養する」ってことなんですけれど、なかなかそれが難しいわけです。とはいえ、このイライラが続くと、徐々に体調が悪くなっていきますから、あまり長期間にわたってこの状態が続かないように注意して頂きたいものです。