インターネット注意報

昔、「ハロー警報」というのがありました。今でもあるんですが、幼い頃に、ラジオでその「はろーけいほう」という言葉を耳にした時には、何に対する警報なのか、なにに注意しなきゃならないのか、さっぱり分かりませんでした。
波浪警報、だと気づいたのはずいぶん経ってからです。それまでは外国人がいきなり「ハロー!」と話しかけてくるのを注意するのか?と半ば本気で考えていました。いったいどんな天気予報なんでしょうねえ…。

インターネット注意報ってのも、よく分かりませんよねえ。空からインターネットが降ってくる…というわけでもありませんし。

さて。

にしむら漢方内科クリニックも、SNSでの広報を…それなりに…やっております。ブログを書いたり(これ)、インスタグラムに写真と記事をアップしたり、というのを、わりと毎日、頑張って来ました。

そんな日々を送りながら、ボンヤリ、SNSなどを見ていたのですが。
ふと気づいたら、やっぱり、SNSで印象的な文章とか、有名になるもの、って、けっこう「不安」に焦点をあてたものが多いのです。

不安とか、あとは、不満とか。

「あー。しあわせだなあ。ノンビリゆっくりしていよう」みたいな文章は、そんなに流れてきません。

むしろ一時期話題になった「保育園落ちた。日本死ね!!!」というように、「劇薬」的な言葉を使った表現の方が話題になり、人目を集める、という傾向があります。

劇薬。本当に良い表現ですねえ。

漢方の世界では、薬の種類を「上品」「中品」「下品」と分類していた時代があります。

上品は、食物と同じように、日々使い続けて良いもの。そのうち神仙になる、というような話も一時期ありました(仙丹術の関係では、水銀を取り扱うことが多かったりします。水銀は金属であるのに常温で液体であること、化合物によって、鮮やかに色が変化することから、変容のイメージとして用いられたのでしょう。水銀化合物が上品の中に混ざっていて、これは神仙への修行に用いる、ということになっていますが、毒物ですので、注意してください)。

下品は「効果は強いが、使う相手とタイミングを選ぶ」という薬になっています。いわば「よく効く」薬の方が「下品」に含まれている、とも言えます。これは副作用もきついとか、使い方を間違えると大変、というような意味合いが込められていたのでしょう。

いわば「劇薬」というのも、漢方の分類で言うなら「下品」の薬ということになります。

つまり、インターネットの情報に長時間さらされていると、慢性的に「劇薬」的な言葉にさらされ続けることになります。

先程も書いた通り、「劇薬」は副作用や、間違った使い方の時のダメージが大きいですので、用法用量を守って、必要最低限でご使用ください、という話になります。

が、インターネット上の「劇薬」的な言葉は、その用量をあっという間に超えていきます。

これは大変。その副作用とか、用法用量を超えた使い過ぎによる悪影響というものが出てきてしまいます。

不安を煽る文章に、不安がどんどん増強してゆく、なんてこともありそうです。

妊娠出産・育児関係は、以前はみな、書店で「妊娠出産バイブル」みたいな本がたくさん並んでいて、そういうものを買って読むのが情報収集だったわけですが、こういう出版物は、それなりに監修されていて、余計な心配をあおらないように工夫されていました。

今は、誰でもが発信できるようになったこともあって、情報が玉石混淆しています。

まして、SNSなどは、本当にドキッとするような文章の方が、反応が良い、ということになりがちです。

どうかくれぐれも、インターネットは劇薬ですので、お取り扱いは、用量をお守りくださいますようお願いをいたします。