不正出血の話

若い女性の場合は、月経っていう出血があったりしますけれど、月経…とは言いづらいタイミングで出血を自覚されること、って、時々あったりします。

ざっくり、月経以外の出血を「不正出血」とか不正性器出血とかって呼ぶわけですけれど、厳密にいうと分類がいろいろあったりします。

高齢者の介護なんかやっている施設でも、「不正出血…だと思います」なんて話になって、産婦人科を受診してもらおうか、どうしようか、みたいな話になることがあるのですが、たいていは、下着に出血がついていた、っていうのがきっかけになったりします。

そうすると、まずは「腟からの出血なのか、それとも他の場所からの出血なのか」っていうことから考えることになります。他の場所、っていうと、たとえば痔からの出血があるとか、外陰部に傷ができていて、そこから出血したとか、っていうこと。

高齢の女性でも、ときどき子宮からの出血、っていうのはあって、そうするとやっぱり婦人科ってことになります。いわゆる子宮の癌なんかを念頭に置いて診察をすることになります。

なので、子宮癌検診を長いこと受けておられない、なんていう方は、良い機会ですので、いちど子宮癌検診をお薦めします。

あとは子宮体癌なんかが疑われる場合は、超音波検査を一緒にしてもらえるととても嬉しい。

昔は子宮体癌の検診もあったんですけれど、今は「あまり意味がない」っていうことでがん検診としては実施されません。超音波検査で疑わしい時なんかにする検査になりました。

子宮癌(子宮頸癌+子宮体癌)の可能性が否定されたあと、の話として「不正出血の理由」ですけれど、これもいくつかあります。

一つは、萎縮性腟炎。昔は老人性腟炎なんて呼ばれていましたが、閉経後、エストロゲンの分泌が低下することで、腟粘膜が薄くなってしまうと、ちょっとこすれたりしたときに出血するようになります。場合によっては、けっこう歩いた、なんていう翌日に出血を認めたりすることもあります。

治療は、腟粘膜にエストリールというエストロゲンを補充する腟錠を入れたりします。漢方薬の八味地黄丸が有効、という話もあったりします。

もう一つ、月経がある時期のかただと、月経周期の14日目前後、ちょうど排卵のタイミングに1日から3日くらいまでの期間で認められる少量の出血、っていうのがあります。一般に「排卵期出血」と呼ばれることがあります。

これは、子宮内膜が月経後から増殖してきて、排卵後には、分泌期内膜として、やや分厚い状態を維持するのですが、この切り換えのタイミングが微妙に遅れる、なんていうことが起こっているのだろうと考えられます。年齢が上がってきたり、体力の消耗がはげしかったりすると、出てくる印象がありますので、しっかり休んで、体力を補っていただくことが必要なのかもしれません。

ただし、「大丈夫だろう」って自己判断で、癌検診受けない、っていうのはやっぱり危険です。

院長は昔、他のクリニックで月経不順だ、とホルモン剤を処方されていた(けれど、子宮癌検診はしていなかった)方を診察したら、見るからに癌が広がっていた、という経験があります。やっぱりちゃんと、子宮癌検診を受けておいていただきたいと思います。

(なお、にしむら漢方内科クリニックでは子宮癌の検査はしておりません。他のクリニックや病院で検査を受けてください)