使ったあとのメンテナンス

ひとの身体、というのは、時々、あちこちが痛くなります。
痛み、ということについて、以前書いたことがありました。短期的な痛み、というのは生き物が生存してゆくために大事な情報です。痛みを感じないような個体は、危険に飛び込みがちだったり、危険な状況に気づかないまま放置してしまったりするそうです。
避けるべき「危険!」という情報が「痛み」として入るからこそ、わたしたちはその痛みが発生しないように…危険に近づきすぎないように…工夫する、というのが個体が生きのびるために大事なわけです。
怪我をしているとか、骨折しているとかそういう場所は、なるべく安静に保つ、なんていうのも、こうした痛みがある場所を動かすと痛くなるから…ということがあります。骨折などは、固定しておかねば、変なくっつき方をするとか、妙なところで骨が曲がるようになる(偽関節)とか、そういうことだって起こりかねません。
ところで。
日常の中で、怪我を除くと、わりと多くの痛みが「筋肉の緊張」によって引き起こされている、ということがわかります。
筋肉の緊張がもたらす痛み、というのは、結構多い。
人によっては、大胸筋の筋肉痛で、心筋梗塞かと思った、なんていうことをおっしゃる場合もあります。
関節痛、と呼んでいるものの中にも、この筋肉由来の痛みが、かなり多く混ざっているのではないか、と考えています。
たとえば、手の指が痛くて動かせない、という方の場合。
指を動かす筋肉がかたくなっていて、その緊張が強いことで痛みが出てきている、ということもありそうです。
こうした緊張が強く出てくると、場合によっては、手がこわばって、動かしづらくなる、ということもあるようです。
じゃあ…ということで、なるべくセッセと動かしましょう、ということが提唱されるわけです。
手や指を使い過ぎて、かたまりやすくなったので、しっかり動かして、手をグー、パー、と動かしましょう…という指導がなされているのだとか。
ええと。
通常の範囲内で指を動かす作業をしていると、指を動かす筋肉…曲げる方には「屈筋」が、伸ばす方には「伸筋」があります…が、それぞれが段々かたくなってきます。
この指を曲げ伸ばしする筋肉は、一番長いもので、肘のところから伸びているものがあります。長指屈筋とか、長指伸筋と呼ばれています。これらの筋肉は、通常の握る、開く、という動作では、あまりストレッチになりません。
つまり慢性的に稼働している状態が続いています。
そもそも、手指を使い過ぎて、疲れているところで、手指の開閉の運動を加えると、さらに稼働の負担がかかる、ということになります。
「筋肉がかたくなっておられますから…それが痛みの原因でしょうねえ」とお話した、その直後、多くの方が「じゃあ、運動ですか?」って確認されます。
運動…も、決して悪くありません。ひとも「動物」ですから、動くことは大事で、それをやめると、筋肉がドンドン減ってゆきます。
しかし。
筋肉が稼働しつづけて、くたびれて、痛くなっている時に、さらに稼働させる、ということだけでは、ちょっと回復の道のりにはなりづらいわけです。
むしろ、使った後のメンテナンスをしっかり心がけて頂きたいところです。
メンテナンスとしては、ストレッチや、あるいはマッサージ(ご自分でやって頂くだけでもだいぶ違います)。筋肉を温める(入浴なども良いですが。局所を温める、ということもとても重要です)などが有効です。こうしたメンテナンスを大事にしていただくことで、筋肉が疲労から回復します。
筋肉を鍛える、というのは、いったん酷使して、壊れた筋肉が、やや過剰に回復することで起こります。この「過剰な回復」を待たずに、どんどん負荷をかけて、酷使する、というのでは、筋肉が育つ余地がなくなってしまいます。
どうか、使った後には、しっかりメンテナンスをしていただきたいものです。



