倦怠感とのおつきあい
「倦怠感が…」とおっしゃって、来院してくださる方が増えました。倦怠感、って、普通の病院やクリニックでは治療の対象になりづらいのでしょうか。
たしかに「そこは漢方の出番ですね!」っていうことになりそうです。(そういえば、そんなことを申し上げたけれど…なんて記事も書いたことがありました)
昔お世話になった、漢方の専門医の先生の昔話を聞いたことがありますが、先生は、赴任する時に「困ったときにはツムラの41番!」っていうアドバイスをもらっていらっしゃったそうです。
「ツムラの41番」っていうのは、ツムラの漢方エキス製剤にはそれぞれ番号が割り振りされています。たとえば「1番」は「葛根湯」になっています。他のメーカーも同じ番号に同じ処方がくるようにされていたりするのですが(メーカーによっては独自の番号を割り振っておられるところもあったりします)、そんな中で「41番」は「補中益気湯」という処方になります。処方の名前としては「中を補う(つまりおなかを元気にする)」ことと「気を益す(つまり元気になる)」ことが記載されているわけで、割と応用範囲も広い処方になっています。はっきりしないけれど身体がしんどい、というような時に、使う処方だったりします(とあるフローチャート式の漢方処方案内には、冒頭に「まずはこれを使ってみる」みたいな書き方がされていました)。もちろん、これがあわない方もありますので、実際に何をどのように使うのか、というところは、主治医とよくご相談して頂きますようお願いいたします。
ところで、倦怠感をおっしゃる方にも、それぞれあって、ひとによって体調の状況が異なる、ということに、わたしも臨床をしたり、あるいは健康診断の時のお話をしたりしている中で、気がつきました。
ただ、日本人の、とくに仕事をお持ちの方の場合、寝不足の方がとっても多いのです。倦怠感…とおっしゃるのですが、睡眠時間が4−5時間では、やっぱり体力的に回復しないまま、翌日の仕事…ってなっておられるのでしょう。
できたら最低でも7時間眠っていただきたい、とお伝えするのですが、眠れない、とか、「目が覚めてしまうから、眠りは足りていると思っていた」という方が多いように思います。
わたしの想像ですが、寝不足だけれど頑張って起きて仕事しなければならない、という思いが強くなると、常に緊張状態になっておられる、のではなかろうか、と思っています。「眠気が来てはならない!」って日中ずっと頑張っているわけですが、夜になった途端にその緊張を無くすわけにはいきません。就寝するときも「眠気が来てはならない!」の緊張が続いていると、やっぱり眠りも浅くなりますし、わりと早くに目が覚めたりしそうです。
じゃあどうやって、この眠れない身体をリラックスさせて、睡眠時間を十分にとることができるようになるか、っていう部分が、結構難しいと言えば難しいわけです。
うっかりリラックスして眠ったは良いものの、今までの寝不足を一気に解消しようとして、翌日の夕方まで寝てしまっていた、なんてことになっても、それはそれであちこちに迷惑がかかったりします。
そういう意味では、もうちょっとゆっくり休む時間を、みなさん確保して欲しいところだなあ、とは思うのですが…。
世間では「可処分所得」ならぬ「可処分時間」という言葉も用いられるようになってきました。自分の自由になる時間が、現代の職業人はあまりにも少なくなってしまっている、のかもしれません。
そして、平日の日中から夕方まで自分の自由になる時間が無い、という状況になればなるほど、不思議と夜更かしをしたくなる、のだそうで、これを「代償性夜更かし」とか「代償性蕩尽」なんて言うのだそうです。
じゃあ、頑張って早くに眠ったら良いじゃない…っていうことだけでもなくて、やっぱり自分のための時間を丁寧に過ごすことが、明日も頑張ろう、っていう思いを育む大事な時間になったりもします。
一番は、しっかり自分の時間もありつつ、睡眠時間も確保できること、なのですが、なかなかそれは難しいです。
とはいえ、倦怠感が続いておられる方には、一度ご自身の睡眠を見直していただきたいところです。
以前健康相談室、という形でお話をさせていただいた時のテーマが「からだがしんどい、だるい」ということで、「倦怠感」を中心にお話ししました。
こちらには、倦怠感の別の原因についても少し触れていますので、よろしければまたご覧くださいませ。