場所を耕す

精神科医の師匠は、そのお師匠さまである、野田俊作氏の書斎で、自分の勉強をさせてもらったことがあるのだ、という話を聞いたことがあります。

ビックリするくらい、すごくよく集中できて、それを野田氏に伝えたところ「ここは私が場所を耕しているから当然だ」というようなことを返事されたのだそうです。

場所を、たがやす?と半ば疑問に思いつつ、その表現がわたしの心に残ったのでした。

たがや・す 【耕す】

(動サ五[四])〔「たかへす」の転〕

犂(すき)や鍬(くわ)を入れて田畑を掘り返し,土を軟らかくする。耕作する。「田を―・す」

(スーパー大辞林)

作物の育ちや実りが良くなるように、田畑の土をやわらかくすることをいうのが一般的です。

しかし、書斎であっても、丁寧に場所を整え続けて、実りが良くなる場所として育てていくことを、「たがやす」と呼んでも良いのかもしれない、とその時に感じたことを覚えています。

クリニックをはじめるにあたって、いろいろなことを考えましたが、この野田先生のおっしゃった「場所をたがやす」という言葉は、書斎だけでなくて、クリニックにも適応できるポイントなのだろうと感じています。

具体的にどのような行為が「たがやす」ことになるのか、を聞いたわけではありませんが、こうした表現を、自分の行動の指針のひとつとできることを、とてもありがたいことだと思っています。
そして、にしむら漢方内科クリニックは、皆が元気になってゆく場所、という形になるように、耕し続けたいと思っています。