塞翁が馬

「人生に、良いことは2つ無い」と、昔、東山紘久先生は、講義でおっしゃっていました。
たとえば、才色兼備、みたいな表現はありますが、それが「良いこと」だとするならば、そこに加えて良いこと…というよりは、それであまりに人気になりすぎて…みたいな「悪いこと」が出てくるのだ、というような話であったかと思います。
そして「悪いことも2つ無い」ともおっしゃっていました。
病気をする、ということだって「悪いこと」かもしれませんが、そこで「しっかり休むことができた」とか「自分自身を見直すよいきっかけになった」などの「良いこと」をもたらしてくれることだってあり得ます。
そんな話が昔、あったのでした。
「人間万事塞翁が馬」これは『淮南子』人間訓(えなんじ・じんかんくん)の言葉です。
国境の塞に住んでいた老人の馬が胡の国へ逃げてしまった。老人は「これは幸いの基になるであろう。」と言う。
数ヵ月後、その馬は胡の国の駿馬を連れて戻ってきた。すると老人は「これは不幸の基になるはずだ。」と言う。
老人の子供は落馬して足を折ってしまった。
人々が見舞いを言うと老人は「これは幸いの基になるであろう。」と言う。
一年後、胡の国の軍隊が攻めてきた。
多くの若者が戦死したが、その子は足が不自由であったため戦わずにすみ、親子とも無事であった、という、人生において禍福が定まりがたいことのたとえです。
塞翁が馬、という話は、まさにそのような「良いことは2つ無い」「悪いことも2つ無い」という逸話になっているのだと感じます。
まあ、あまり極端に大きな不幸があるのは勘弁願いたいところですが、良いことと悪いこと、という二項対立じたいが、ひょっとすると、何か間違っている、という話なのかもしれません。












