忘却探偵、掟上今日子

おきてがみさん、が主人公の推理小説があります。

この主人公の方、一度眠ると記憶がまるごとリセットされる、という設定なのだそうです。自分の名前も覚えていられない、ということで、マジックで自分の身体に「置き手紙」を残し、毎日自分自身が誰であるかを推理してから生活がはじまる、という設定でした。

掟上今日子――またの名を、忘却探偵。すべてを一日で忘れてしまう彼女は、事件を(ほぼ)即日解決!あらゆる事件に巻き込まれ、常に犯人として疑われてしまう不遇の青年・隠館厄介(かくしだてやくすけ)は今日も叫ぶ。「探偵を呼ばせてください――!!」スピーディーな展開と、忘却の儚さ。果たして今日子さんは、事件の概要を忘れてしまう前に解決することができるのか?

西尾維新氏の小説で、シリーズになっています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%98%E5%8D%B4%E6%8E%A2%E5%81%B5%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

眠る前のことをすっかり忘れていく探偵が、どうやって事件を解決するのか?というあたりが面白い物語ですが、そういえば、わたしがお薦めする「明日の自分への申し送り」ってえいうのは、ひょっとするとこの「置き手紙」みたいなものなんでしょうか。ねえ。

…ということに気づいてからというもの、ふと「おきてがみを書いて」と言うたびに、この白髪、メガネの「今日子さん」のイメージが出てきます。

シリーズ最初の作品、『掟上今日子の備忘録』表紙。左腕に「私は掟上今日子。25歳。探偵。」ってペンで書き残してあるのが描かれています。

たしかに、眠る前の記憶がまるごと空っぽになっているなら、それは、頭のはたらきもスムーズになっていそうです。

実際に認知症の方が瞬間・瞬間の受け答えをしている時には、とても緊張していて、神経を張り詰めている状態でおられたりしますから、一概にそれが良い状態とも言いづらいのだろうと思います。まあ、小説は事実をそのまま描くものではなくて、都合の良い脚色がいっぱいあるからこそ面白いところもあります。

ひとの心の動きを理解できるように、本を読むと良い、という話がありますが、どうやら、ノンフィクションの、間違いの無い事実が記述されている本よりも、こうした創作の物語の方が、ひとの心の理解に良い、という報告がありました。

なんだか、意外な気がしますが、物語を書き出した著作者の描写が大事、ということなのかもしれません。