揉み返しの話とムチウチ症
先日、医学部に入る前に「マッサージだか指圧だかに興味を持ち始めた」っていう話を書いたのですが(いわゆる「五十肩」との出会い)、こうした興味は、最初の師匠(大村雄一氏。いちばん最初の「師匠」のこと)と出会ったことで拡大しました。
次の、ボディートークの師匠(増田明氏。師匠のこと、そしてボディートークのこと)に学ぶようになってからは、そこに理論が重なってきて、からだの緊張はこころの緊張から引き起こされること、緊張が長期化すると、つよいシコリになること、また、つよい緊張のシコリは、ほぐれてくる時に痛みを伴うことがあること、などを学びました。
いわゆる揉み返し、というのが、どのような機構で起こっているのか、ということに、医学的には、「強い刺激を与えすぎて、内出血を引き起こした」程度の説明くらいしかできていないのかもしれませんが、たとえば、ムチウチ症などを考えたらわかることがあります。
ムチウチ症は、多くは追突事故で発生すると言われていますが、これを増田氏は「事故の時に発生した強い緊張(…これは頭を持って行かれないようにするための防衛反応)が、そのまま持続している状態」であると説明しています。そして、その緊張が少しずつ緩んでくる時に、局所の痛みや頭痛、あるいはめまいなどの不調を伴っているのであり、症状を解消するには、頸部の緊張をどんどん積極的に緩めていくことが必要なのです。
ただし、急にゆるめすぎると、様々な症状が急激に出現することになり、これはこれで耐えづらい状況に陥ります。なので、少しずつ、しかし積極的に緩めていくことが、症状を早急に解消する方法です。
もちろん、損傷がある場合はその限りではありませんので、整形外科で他に異常がない、ということを診ていただくことがとても重要です。
揉み返しも、内出血の話だけではなくて、きっと、こうした「緩んだ時に出現する痛み」というものが混ざっているのだろうと推察します。
本来なら、このような揉み返しが出現するような緊張を最初から作らないで済めばこしたことはないのですけれど、人はどうしても無理を重ねますので…。
増田氏は「ひとはどうしてお正月(などの長期休み)になると風邪をひくのか」という課題から、風邪というものの人の身体における意味を教えてくださいました。
台風が、あちこちに被害を引き起こす一方で、太平洋の海水温を低下させるはたらきがあるように、人の身体において、風邪をひくことで、むしろ体調を整えているのです。そして、気を張っている時にはそういう変化は起こりづらいので、どうしても連休になるタイミングでそうした症状が出てきやすくなるのだ、という話でした。
頑張ることが全て悪いわけではありませんが、頑張るときと、緩める時と、それぞれのバランスが必要ですし、両極端を行き来するのではない、穏やかな中庸を実現できたら良いな、と思います。