星座と布置

毎日、お昼の12時に新しい記事をアップしている、この院長のブログですが、今日は「星座」の話です。真昼に星の話?って思いますけれど…。以前も星の話は書いていたのでした。

昼間の星を見る

昨日も星の話を書いたのですが、星空については、もうひとつ、書いておきたい話題があります。 わたしも伝え聞いた話なのですが、太平洋戦争の時代だと思います。一人の戦…

昔『真昼の星空』という本がありました。ロシア語の同時通訳をなさっていた、米原万里さんのエッセイ集だったようです。

米原さんはもともと共産党の幹部だった?お父様の海外在住に帯同されていて、プラハで幼少期を過ごされたのだそうです。チェコは、チェコ語が公用語なのだそうですが、さすがに日本との関係で考えると縁の薄い言語になりますから、ロシア語の方がまだ有用、という判断もあったのかもしれません。

ロシア語の通訳者から、エッセイストに肩書きが変わっていますが、エッセイ集『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』とか、あるいは、当時の思い出をもとに書かれた小説『オリガ・モリソヴナの反語法』などの本で、当時のチェコのロシア語学校の雰囲気が伝わる文章を残しておられます。卵巣癌で2006年に逝去されていますが、ソ連崩壊前後のソビエトやロシアに関わっていらっしゃった方ですので、含蓄のある文章がたくさん残っています。

さて。あらためて話を戻します。星座の話。

世界の空には88の星座があるんだそうです。その多くを、わたしは見分けることができませんが、それでもいくつか、有名なものなら知っています。たとえば、冬の空にうかぶ三連星のオリオン座。夏の空に浮かぶさそり座。

オリオン座の三連星は、やはり、かなり昔から人の目をひいたようで、和名もいろいろと残っているようです。
ところで、オリオンのベルトと見立てられる、ほぼ一直線に並んだこの三連星ですが、実は、地球からの距離は全然違います。2つの星はおよそ700光年くらいの距離である一方で、もうひとつの星はなんと、2000光年くらいと、およそ3倍の距離にあるのだそうです。地球からは仲良く並んでいるように見えていますが、それは、たまたま、方向が重なっていた、というだけの話だった、という驚きの事実です。

連星と呼ぶ時には、光の明るさもわりと揃っていることが大事らしいのですが、この三連星、遠くの星がしっかり大きく光っているのでしょう。地球から見上げると、ちょうど良い感じに仲良しに見えるわけです。

このような、星の配置のことを「コンステレーション」と呼ぶわけです。日本語訳するとそのまま「星座」ということになるのですが、この「コンステレーション」という単語を、心理学の世界では別の意味合いを込めて用いていて、別の翻訳語があてられています。こちらの「コンステレーション」を「布置」と呼びます。

たまたま地球から見た時に、光り具合が同等で、たまたま、明るいその星が「並んで」見えた、という偶然に、ひとは、それでも意味を見出すわけです。

点と点が(仮想の)線によって繋げられることで、意味が生じるわけですが、星空だけでなく、ひとはしばしば、このような「仮想の線」を自分の心の中で作り出して、意味を与えるわけです。

それは、ある時は、心を勇気づけるものになりますし、また別の時には、恐るべきものにもなり得ます。

天にまたたいている星のほとんどは、きっと、地球という星のことなど知らないままに、生まれて、そして消えてゆくのだろうと思いますし、星の寿命に比べたら、地球そのものの寿命の方が短いです。ひとの命など、比べるまでもなく、ずっと短いわけですが、そういう星を見上げつつ、心がどうしても動く、というのがひとのありようなのかもしれません。