暑気あたりの話(健康教室より)

先日の健康教室の話題から、暑気あたりについて。

暑気あたり、って、いろいろな事情で起こります。

熱中症とはちょっと違って、むしろ長い暑さにジワジワやられて、食欲が低下する、なんていうような状況のことを言ったりします。

暑い季節に食欲が低下する理由はいくつかありますが、ひとつは、冷たい飲み物の飲み過ぎだったりします。

胃腸の営業温度は37℃ですから、冷たい飲み物がやってくるたびになんとかして胃腸を温め直さねばなりません。これを繰り返すと、胃腸が消耗します。

もうひとつは、日本なんかで結構多いのですが、湿気との関係です。

身体の湿気をさばいていく、と言うのですが、不要な水分を整理して他所に動かしていくのは、五臓のいずれもがわりとその作用を持っています。とはいえ、いちばん大きい働きをするのが腎で、その次くらいに脾…つまり胃腸の働きが大事と言われています。

湿気が強い日本では、身体に湿気が残りますが、これらをうまいこと処理しようとすると胃腸に負担がかかる、ということです。

冷たい飲み物や、こうした湿気などで不調になったときには、酸っぱいものが割と有用です。日本ではウメボシが有名です。

タイやフィリピンでは「タマリンド」と呼ばれる豆の仲間があります。日本でも時々使われていますが、タイ料理の代用品で「梅干しで代用しても可」なんて記述が多いです。ペーストを輸入食品店などで取り扱っていたりしますが、梅肉エキスによく似た色合いと、よく似た酸っぱさがあります。

酸味だけじゃなくて、胃腸の働きをよくする味として、「苦味」があります。苦味健胃薬と呼ばれるグループの薬がありますが、一般的には「陀羅尼助」とか「百草丸」などが有名だったりします。

原材料に含まれている「キハダ」は、実際に樹皮の内側のほうが黄色い樹で、オウバクとも呼ばれます。宇治にある黄檗(オウバク)という駅は、黄檗宗のお寺があることからつけられましたが、キハダを植えていたようです。これは、苦い木なので、虫がつきづらい、ということでお経の版木に使われたり、あるいは病気になった方のための薬として使われたりしたようです。

中国には杏林伝説、というのがあり、杏林大学の名前の由来になっていますが、これは、治療費の代わりに杏の木を植えてもらった、という故事によります。

杏の木も病気の治療に用いますので、いずれ来る人のために、投資をしてもらう、という意味合いだったのでしょう。

夏に胃腸の働きが落ちると、今度は秋に食事を摂って、冬に備えることがしづらくなります。そうすると、冬に消耗して、春先から動きづらい。

逆に言うと、少しずつ手当てをしていると、来年の夏は、胃腸の働きが落ちづらくなって、夏バテしづらくなります。

また、胃腸の働きを補うために、漢方薬を用いることもしばしばあります。

暑さに対処しつつ胃腸を支える処方としては「清暑益気湯」という処方が有名で、暑気あたりに対してよく使っています。

今日のこの投稿で、とうとう院長のブログ、300記事になりました。いつまで毎日更新が続けられるか、はわかりませんが、おかげさまでクリニック本体ともども、頑張って続けられております。ありがたいことです。