東京の大雪

昨日は、季節はずれの雪が降って、寒い朝でした。さすがに積もるほどではありませんでしたが。冒頭の写真は、先月のはじめころの、積雪と凍結があった時のものです。

関東平野、とくに東京23区内に雪が降って、多少なり積もったりすると、ニュースなどでは大騒ぎになります。

SNSでは、「わたしの住んでいるところはもっと雪が降るが、別にどうということはない。東京での雪は騒ぎすぎ」というような意見が散見されます。

最近は「いや、東京は普段から雪に備えている場所じゃないから、あの、ちょっとしただけの雪が大変なのだ」という言葉も見られるようになりました。それぞれの地域の、それぞれの気候と、そこから逸脱したときの大変さがあるのだろうと思います。

「それにしても、大雪、ねえ…。」

と、京都で生活をしているわたしは、全国放送のニュースを横目で見ながら、思います。

ニュースだけを見ていると、なんだか、世界中に雪が降り積もっているかのような錯覚に陥りそうな報道です。

ひとは、自分の周りで起こったことを、この世の全てだと思い込みがちですから、まあ放送局の方がいらっしゃる場所が基準になるのだろうなあ、と思うわけです。

漢方の診療をしていると、時々「疲労困憊で」という方がご相談にいらっしゃいます。

長年の仕事だったり、大病をされたり、あるいは産後だったりして、大きな消耗をされたあとの回復が間に合っていない、という方も結構いらっしゃいますし、そういう時に、漢方薬で言う「補剤」というジャンルの処方は大変有用です。

一方で、かかっている先生から何らかの補剤をもらっているのだけれど、疲労困憊が解消しなくて…という方も時々いらっしゃいます。

脈をみると、ずいぶんとしっかりしておられる。あるいは、お腹をみても充実されている。と、肩や首をみると、すごく凝っておられる、というのが特徴的な様子であるかもしれません。

疲労感を自覚するのは、脳みその一部ですから、その周辺の筋肉が緊張して、疲労困憊状態である、と感じると、全身がそうであるかのような錯覚に陥ります。問診だけだと、こういう「疲労困憊」の訴えに、「補剤」を処方しがちですが、あまり効果的ではなかったりします。

それよりも、肩こりを解消できるような処方が効果があったりします。ご自身でも「いや、補剤の方はあまり実感がでなくて、葛根湯の方が効いている気がします」なんておっしゃったりします。

この「疲労感」だけが強くでている状態を、わたしは「東京の大雪」と呼んでいます。

つまり「くたびれた!」という情報ばかりが多くなっていて、実態とはかけ離れている状態が発生しているのだろうと思います。

疲労困憊をおっしゃる方全体に占める割合はそれほど多いわけではありませんが、どうしても良くならない疲労感をおっしゃる方の中には、ごく一部とはいえ、そのような状況の方もいらっしゃいます。

一番はご本人の主観を大事にしたいところですが、「疲労困憊」と「疲労困憊感」の違いについて自覚的でありたいと思っています。