漢方の四診「望診・聞診・問診・切診」のこと

わたしのいちばん最初の漢方の師匠は、切診とはあまりおっしゃらず、触診、と呼んでおられました。切診、という言葉を知ったのはそれから数年経って、師匠からの話じゃなくて、自分で漢方の勉強を始めようと思った時のことでしたので、ずいぶんと時間が経ってからでした。基本的な言葉を知らずにすこし恥ずかしい思いをしました。

一般的な漢方では、四診として「ぼうぶんもんせつ(望・聞・問・切)」と呼んでいます。

望診は「見る」こと。いわゆる視診とは違うんですか?って言われますが、ちょっと違う扱いをしている、らしいです。どう違うの?って話になりますけれど…望ですから、なんていうんでしょうか。「すこしぼんやりと全体を見る」的な意味合いでしょうかしら。

舌診というのもありました。ベロをべーっと出していただいて、その色合いや形なんかを見て、いろいろと判定する、というものです。これは望診に入れるのか、と訊かれると、私はちょっと「うーん」って言います。もうちょっと聞診の一つ、くらいにしておく方が良いのかもしれません。
…というのは、あとで、「望・聞・問・切」の順についてお話をすることにします。

聞診、というのは、「きく」ことをするのですけれど、聴診…ともちょっと違う。
もともと香りも「きく」ものでしたから、匂いを嗅いだり、あるいは、音…声の様子なんかを聞いたりするものを言ったようです。四診と言いながら、聞診はあまり現代では活躍の場所も少ない気がします。

問診、はこれはあまり以前から変わっていないのかもしれません。問い尋ねることですね。言葉を使って、病状を確認していく方法になります。

そして、切診。脈に触れて、脈をみる「脈診」と、腹部の触診「腹診」がその中心として挙げられています。西洋医学では「脈をみる」とは言いますが、脈拍数とか、リズム以上に情報をとることはあまり多くないように思います。

腹部の触診は、西洋医学でも行いますが、ちょっとお作法が違ったりします。外から見ているだけではあまり違いがわかりづらいかもしれませんし、それぞれ流用されている方法もあったりします。

この「望・聞・問・切」の順番なのですが、「望」で、わりとふんわり、大枠を把握しつつ、そこから、少しずつ核心に近づき、「切」その中心に切り込んでいく、という順番になっているように思ったのです。
そうして考えてみると、脈をみている間でもふれた時におおよその全体をみつつ、その後細かいところを気にしていくわけで、脈診のなかにも「望・聞・問・切」のようなものがあるんじゃないか、って思うにいたりました。