漢方内科ってどういうところ?

神農像。ツノがはえていて、目が四つとも言われる。薬草を舐めて調べたとされており、草を噛んでいる状態の絵である。

今さらですが、にしむら漢方内科クリニックは「漢方内科」を標榜しております。

漢方内科って、どんなことをするところなの?内科とどう違うの?…って疑問をお持ちの方もいらっしゃるようですので、今日はそのあたりの話をちょっとしてみようと思います。

漢方内科は、「漢方医学」を背景とした診察と治療を行っているところです。もちろん、医師免許を取得するには西洋医学の修得が必須ですから、西洋医学の教育と訓練も受けて来ましたが、西洋医学と漢方医学とは実は大きな違いがあります。それは、「気」の存在を認めるか、認めないか、という点にあります。

伝統医学と呼ばれるものは、漢方(あるいは中医学)の他に、アーユルヴェーダとか、あるいはユナニと呼ばれるイスラム文化圏の医学などがありますが、こうした伝統医学が現行の西洋医学と異なる点は「生命力」的なものを要素として認めるところにある、とされています。

漢方医学、ないし中医学では「気」と呼ぶものですが、こうした、物質として観察できない、物理学や化学で説明できる現象に還元しづらいものを想定した診療というのが、西洋医学とは異なった点になります。

もちろん、さまざまな研究が進む中で、「気」のはたらきの一部は、物質の化学反応などで説明できるようになってきています。ひょっとしたら、もっと研究が進んで、科学的な解明と理解に到達する日があるのかもしれません。

「気」は見えるのか?あるいは、実在の証明ができるのか?という話ですが…何かをつかまえてきて「これが気です」と示すことはできていない、というのが目下の悩みどころです。

鍼灸の学校などでも、解剖生理学や現行の西洋医学についての講義がありますが、同時に鍼灸師としての育成をする中では、気を認識して、それに働きかける方法を修得する必要があります。それなりに、定型の教育体系はあるのでしょうけれど、教えておられる先生がたの中にも「(今まで、気を認知していなかった人が)どうやって気を認識できるようにさせて、その上で、働きかけられるようにするか」に頭を悩ませておられる方がいらっしゃるようです。

漢方医学では、直接的に認識できない「気」の状態を把握するために、望診(顔色や舌の様子を診る)や切診(脈や腹部に触れて身体の様子を診る)を中心として行い、他に聞診(声の様子や臭いなどを通して体調を想定する)とか問診(具体的な症状の有無などを問いかける形で質問し、本人の状況を知る)を行います。

これらの方法をまとめて「四診」と呼びますが、これらから得られた情報を総合的にまとめ上げて、現状の体調を判定し、それに必要な漢方処方を決定する、というのが診療の流れになります。

また腹部の触診は、診療の行為であると同時に「按腹」と呼ばれる治療でもあります。腹部の状況を診察しつつ、同時に調整することができます。

加えてわたしは腰背部や頭部の触診も併用しております。こちらもわたしの師匠がそうだったのですが、触診即ち治療、ということで学んで来ました。なので、触診しつつ、同時に治療行為でもあります。

そして、こういう診察(と身体の調整)を経て、漢方薬の処方をいたします。

漢方薬は、様々な植物や鉱物などから得られた「生薬」を組み合わせた薬であり、見えない「気」に働きかけたり、「気」を補ったりすることができます。

また、普段の生活や、日常に起こった出来事などが「気」の状態を変化させることもありますので、食事や運動を行う時などの注意するポイントをお伝えしたり、ご自宅でできる養生をお伝えしたりすることで、漢方薬の薬力を底上げし、効果を発揮しやすくする、などの生活指導ができることもあります。

こうした診療がどのような症状あるいは病気に有効か?という話になりますが、緊急対応が必要とか、手術が必要とされる病態を除くと、おおよそほとんどの状態の方に対処する方法がある、ということになります。とはいえ、いわゆる西洋薬も近年、とても良い薬が増えてきていますので、西洋薬で対処できる病態では西洋薬をお使いいただく方が治癒までの時間が早いかもしれません。

まとめますと、漢方内科が得意な部分は「西洋医学では原因がはっきりしない不調」「西洋医学では対処法のない不調」あるいは「西洋薬が何らかの事情で使えない方の不調への対処」というところになります。

もちろん、あらゆる症状をどれも解消できる、というわけではありませんので、ご相談しながら、どこまで解消できそうか、というお話をさせていただくことになります。

解消できないまでも、症状が軽減する、ということもございますので、よろしければどうぞ一度ご相談くださいませ。