親指の過労に注意

ヒトの手には指(フィンガー)が4本あります。すぐに「5本じゃないの?」って質問が出るでしょうが、親指は「サム」って名前がついています。フィンガーじゃない、っていうのは本当に興味深いことだと思っています。
一方で、足の指先は「トウ」で、5本とも同じ扱いにしている様子です。これはどうなんでしょうねえ…?足袋を履くとわかりますが、足の第一趾とその他、という形で分けます。サンダルの鼻緒はだいたい、この第一趾と第二趾の間に挟むわけです。
…まあ足の話はちょっとおいておきますが…。
…手の指の話に戻ります。
親指は、他の指と対向します。なので、モノをつかむ、あるいはつまむ、という時には、たいてい、親指を使います。この親指といのは、大変便利な指で、なんなら、もう一本くらい、対向する指が、小指側についていても良いのじゃないか、と思うこともあります。(反対側に拡張した第二の親指の話題は一度「身体の錯覚」の話題を書いたときに少しだけ触れました)
https://kanpo-kyoto.com/blogs/%e8%ba%ab%e4%bd%93%e3%81%ae%e9%8c%af%e8%a6%9a/
それだけ便利なのですから、親指というのは、結構多用されているのが日常です。
ところで。昔、ピアノは、親指を用いることなく、他の4本の指で演奏されていた時代があったのだそうです。不思議なことだなあ…と思います。何かの理由があったのでしょうか?…ってちょっと思わせぶりに書いておきます。親指を動員しない理由、があったのでしょうか?
ボディートークの師匠が、いろいろと身体のことを工夫したりしている関係でご縁を頂いた方の中に、武術研究家の甲野善紀氏という方がいらっしゃいます。毎日着物で生活をされていて、講習会には(ホンモノの)日本刀をお持ちになっておられます。この方、ずいぶんと身体技法についての研究も熱心になさっているのですが、「親指の戒め」ということをしばしばおっしゃっていました。
親指を使おうとすると、肩の三角筋が緊張するのだ、と氏は書いておられます。なので、なるべく、日常の動作では「どうしても親指でなければならないところ以外」親指を使わないようにしておられるのだそうです。
氏は、音楽家を対象とした身体技法の講習も定期的にやっておられますが、そちらでは、フルートを構える時に親指を使わない、ということを提案され、それを実践された方が「音が全然違う」と書いておられます。フルートって、横に構えるのですが、親指でささえますよねえ…?どうするんですか?ってお尋ねした時には、手元の棒で実演してくださいました。「演奏家に楽器を運ばせると、腕が疲れて、良い演奏ができなくなる」というたとえ話で説明してくださいました。他の指でフルートの位置を構えてから、おもむろに親指を動かして、添えるのだ、ということで、なるほど、親指の過労に注意、ってことなんだなあ…と思った次第です。
その話の前だったか、あとだったか、は記憶が定かではありませんが、甲野善紀氏の講習会のあと、懇親会にご一緒した時のことです。
テーブルの上にはフライドポテトがありました。氏は、甘いものが食べられなくなった、というような話をされていましたので、いわゆるジャンクフード全般召し上がらないのかなあ、と勝手に思っていたのですが、他に食べるものも無い場所で、フライドポテトをつまんでいらっしゃったのが、印象的でした。
もうひとつ印象的だったのは、ポテトをつまむ、指のことです。
普通なら、親指と、人差し指、あるいは中指を使ってつまむと思うのですが、氏は、人差し指と中指をつかってポテトをつまんでおられたのです。
同じ方向に向いている指ですから、なかなか面倒くさい話に思えますが、それよりも、無駄に親指を使わない、ということの方が優先されたのではないか、と勝手に推察しております。
そのくらい、親指の使い方には気をつけることが大事だったのだと思います。
最近、スマホを使うことが増えました。移動しながらスマホを使うと、どうしても片手で持って、画面に親指を伸ばす、ということになりがちです。
これをやると、五十肩の原因になりやすい、ということは、これも以前…ブログに書いたつもりでしたが、Instagramに書いたことだったようです。
どうして、親指を酷使すると、そんなに肩に影響が出るのか、というのを考えてみました。親指は、他の指に比べて、関節が1つ少なくなっています。その分、細かい動きを実現しようとすると、きっと、腕全体を動かしているのだろうと考えられます。つまり、親指のちょっとした動きを調整するために、肩の関節が細かい動作を繰り返す、ということがしばしば起こっているのでしょう。無自覚なところで酷使されますから、気づいたら動きが悪くなっていた、重たくなっていた、ということもしばしば見られます。
わたしも自分自身が、スマホの使い過ぎであったことに気づくまでに、ずいぶんと酷使し、変な筋肉の緊張を作って、肩を痛めたことがありました。
ついつい、便利なものですから、使いたくなるのですが、便利な部分に頼りっぱなし、というのも、ほどほどにしたいものです。