院長のバーチャル講義2(月経のメカニズム)

月経のメカニズムを、文字で説明する、っていうのは、けっこう難しいです。

月経にかかわる関係者が多くて、しかも、同時にあちらとこちらで別々に動いているから、なのですが、役者が多いのは仕方ありません。
…っていうことで、早速関係者を並べてみます。

子宮。とくに子宮の内膜が月経の周期に応じて変化します…というか、この内膜の状態を見て、月経の周期を評価したりします。

卵巣。こちらは、ホルモンの分泌をしたり、あるいは排卵にむけて卵胞を発育させたりしています。

ホルモン。卵巣から分泌されるのが「エストロゲン」と「プロゲステロン」。これらの分泌をコントロールしているのが下垂体から分泌されている「FSH」と「LH」。さらにこの二つの分泌をコントロールしている視床下部から「GnRH」ってのが分泌されています。

基礎体温。早朝、目が覚めた直後に、動かないまま舌下で測定するのが一応のルール(動くと筋肉が発熱するので、微妙に体温が上昇して誤差が大きくなります)。

妊娠への準備として設定された子宮内膜が(妊娠しなかった周期で)剥離脱落してくると、これが子宮から腟を経由して外に排出されるわけですけれど、これを「月経」って呼びます。

この月経の開始日を1日目として、月経の周期を決めていて、月経周期○日目、っていう言い方をつ使います。英語でCycle date って呼んだりするので、CD○日なんていう言い方もあります。

子宮周期のこと

月経はだいたい7日目くらいでは終了するのが「正常範囲」ってことにされています。その後子宮内膜は徐々に増殖し(増殖期)14日目ころにはおよそ最大の厚さに到達します。14日目以降は少し内膜の状態が変化し(分泌期)この厚さを保って、受精卵がやってくるのを待っています。排卵からおおよそ14日間の間に、受精・着床が発生しなかった場合には、分泌期内膜が、剥離脱落して、月経となります。これを「子宮周期」って呼びます。

卵巣周期のこと

卵巣では、卵胞っていうのが形成されます。これにはFSHやLHのホルモンが作用することで、変化をしてきます(全体でいうと、一番小さい状態から10ヶ月くらいは、これらのホルモンの影響をあまり受けない状態で発育する時期があります。そのくらいゆっくり育ってきますが、最後の1ヶ月はこれらのホルモンの影響を受けてしっかり大きくなります)。卵胞(卵子の細胞を周辺の細胞が育てるような構造になります)の莢膜細胞はエストロゲンを分泌します。ある程度大きくなると、下垂体からLHが一時的に大量に放出されて(LHサージ)、これを受けて、卵胞からは卵子が放出(排卵)され、その後卵胞は黄体に変化します。黄体からはプロゲステロンを分泌します。この周期的な変化を「卵巣周期」と呼びます。

ホルモンのこと

エストロゲンにはいろいろな作用がありますが、特に増殖期の子宮内膜に働きかけて、子宮内膜の増殖を引き起こします。
プロゲステロンは、分泌期の内膜に働きかけて、その維持をします。受精卵が着床すると、黄体は妊娠黄体として、しばらくプロゲステロンを分泌して、妊娠の維持につとめます。

基礎体温のこと

基礎体温は、卵胞期…子宮周期で言うと増殖期に該当しますが、だいたいこの時期にはやや低めになっていて、排卵前にはいったんさらに下がります。その後、黄体期…子宮周期での分泌期…にはやや高めになります。それぞれ「低温期」と「高温期」と呼びますが、これらがはっきり二相性になっているのが、排卵をきっちりしている、という傍証になります。

月経不順があると、まずは基礎体温を測ってみましょうか、って話になるのは、この排卵の様子がどうか、っていうのを確認するため、だったりします。