院長のバーチャル講義7(更年期と更年期障害について)

更年期、という言葉はみなさん、それなりに目にしたり、耳にしたりされていると思います。定義としては「閉経の前後それぞれ5年ずつ、合計10年の期間を更年期と呼ぶ」となっています。

じゃあ閉経は?っていうと、これは少し定義が難しくて。「卵巣の働きが年齢とともに低下することで、恒久的に月経が来なくなった状態」のことを閉経、と呼びます。それはいつになったらわかるの?って話になりますので、臨床的には「一年間月経がなかった場合、最後の月経があったところを区切りとして閉経と呼ぶ」ということになります。

この定義を厳密に運用すると、「わたしは更年期にはいっているでしょうか?」っていう質問に対しては、閉経前の方には「わかりません」ってお返事するしかなくなります。閉経の判定は1年遅れますから、そのタイミングで「これで6年前から更年期にはいっておられたことがわかりました」っていう話になります…役に立ちませんよねえ…。
なかなかそれでは使いづらい定義になってしまいますので、一般的には日本人女性の平均の閉経年齢(51歳ころとされています)を適用して「更年期とはおよそ45歳ころから55歳ころまで」という言い方をするのが一般的になっています。

この更年期と呼ばれる時期にさまざまな体調不良が出現するのですが、内科疾患などによる症状を除外した、残りをまとめて「更年期症候群」と呼びます。そして、こうした症状が生活に支障をきたす場合に「更年期障害」と呼ぶことにしています。

更年期症候群には本当に多様な症状があるとされています。ものの本によると100種類を超える症状が更年期症候群として数え上げられているのだとか。その中でもわりとよく認められる症状が「ホットフラッシュ」と呼ばれるような上半身、とくに顔や頭ののぼせ・熱感です。他には倦怠感やイライラ、不眠、肩こりや腰痛などが挙げられています。

これらは卵巣から分泌されていたエストロゲンが分泌されなくなったことと、それに伴い、LHやFSHが過剰に分泌されるようになったこと、が発症の機序とされています。エストロゲンの欠乏は、更年期以降に、骨粗鬆症や腟粘膜の萎縮なども引き起こします。

これに対して、ある程度のエストロゲンを補充することで、症状を緩和するのが「ホルモン補充療法(HRT)」です。また、漢方薬も更年期障害には有効である、とする報告があったりします。

ところで。エストロゲンの影響から離れることで、さまざまな症状が出現する、っていう構図として見ると、更年期症候群って、実は月経前症候群(PMS)とよく似ていることがわかります。つまり、エストロゲンの欠乏そのものが、というよりは、それまでに積み重なってきた身体の負担が、更年期の時期になって、次々症状として出現する、というわけです。

ですので、やっぱり、日々の生活を見直していただいて、無理なく過ごしていただくこと、適切な食事をして、しっかり睡眠をとること、がお薦めされるわけです。

加えて、私の経験では、更年期によく見られるホットフラッシュは、頭の慢性的な使いすぎで発生した熱であるように見受けられます。このように頭を使いすぎた状態が続くと、どうしても眠りも浅くなりますので、悪循環になりがちです。いったん、頭の緊張をとって、しっかり眠れるように工夫していただきたいところです。

参考 

産婦人科学会 更年期障害 

厚生労働省 更年期症状・障害に関する意識調査