陰陽のこと

漢方の理論を支える思想の一つに陰陽論っていうのがあります。

何事も陰と陽に分けて考えることができる、とかそういう思想があるのですが…そういう思想が一番まとまった形で本になっているのが『易経』だと思います。

昔中国の笑い話で『難經』を勉強しながらひいひいと言っていた学生が、傍らの学生を見て「きみの教科書は簡単そうでいいなあ」って言う、ってのがありました。そちらには『易経』が開いてあったのだというのがオチなのですが、『難經』は鍼灸の治療に関連する医学書で、『易経』は陰陽論とその変化消長を記した哲学書ですから、どちらが難しいか、っていうのは、字面だけでは決められない、ってことになっています。

易経の中には「陰陽の分け方」ってのがだいたいは書いてあって、こういうものを陰と呼び、こういうものを陽と呼ぶ、というのが書いてあります。陰っていうのは、大地だったり、栄養分だったり。牝牛だったり。陽っていうのは、太陽…そのままですね…とか、天とか、あるいは、龍とか。

一応、男女でいうと、男性が陽で、女性が陰ってことになっています。陽の方が「動きとはたらき」で、陰の方が「物質」の傾向が強いもの、という扱いになっています。

ヒトの体の中にも陰と陽が動いている、という風に考えていますが、陽はいわゆる「気」のようなものを想定していて、血液みたいな物質的な要素は「陰」と判定します。

前に五臓六腑の話をしましたが、中身がぎっしり詰まっている「臓」はなので「陰」になりますし、中身が空っぽではたらきがあるものとして「腑」は「陽」とされるわけです。

陰陽の理論はわりとわかりやすい…ということになりそうなのですが、漢方的な陰陽とちょっと違うのがマクロビオティックによる陰陽の分類です。おなじ言葉を使っていますが、分類のルールがぜんぜん違いますので、漢方の陰陽あるいは易経の陰陽をお考えになっているのか、それとも、マクロビオティックの陰陽の話になっているのか、というのは、混ぜ合わせると意味不明になりかねませんのでくれぐれもご注意ください。