風邪の効用

昨年の年末ころから、インフルエンザが大流行しているのだそうです。

当院にも、インフルエンザないしは発熱の診療についてのお尋ねが何件かありました。とは言っても、院内に検査キットを準備していなかったので、対応できかねます…っていうお返事にしかならなかったのですが。

昔のテレビコマーシャルだと「風邪でも休めないあなたへ」というようなキャッチコピーで、症状を抑えつつ、眠気が出ない、というような「薬を飲んで、仕事ができる」系の総合感冒薬が売り出されていました。昭和から平成にかけては、「モーレツ」「二十四時間戦えますか」なんてコマーシャルもありましたっけ。

最近は、新型コロナウイルス感染症などの感染拡大予防もうたわれるようになり、症状がある間は自宅で安静加療することが薦められるようになってきているようです。

ところで、野口整体の創始者である、野口晴哉氏は『風邪の効用』という本を書いておられます。風邪引いたその状況を上手に使うことで、身体が丈夫になっていく、というのがその趣旨になっています。

氏がご存命の当時は新型コロナもありませんでしたし、なんなら、インフルエンザの診断キットも、治療薬もありませんでしたので、今とはずいぶんと状況が異なる、のかもしれません。

が、風邪を「上手にひく」ことで、身体が丈夫になっていく、という視点には、学ぶべきものがたくさんあるように思います。

成人すると、なかなか高熱を出すことも減りますが、人の身体をみていると、高熱をしっかり出して、しっかり休むと、身体がやわらかくなる、ということを、わたしは時折経験してきました。

肩こりや腰痛が、熱のあとで、スッキリ軽くなっている、という経験は、本当に得がたいものだと思います。

わざわざインフルエンザをもらって、わざわざ熱を出す、ということには、賛否もあるでしょうけれど、せっかく風邪をひいて、熱が出ているなら、上手に使っていただいて、身体を緩めていただきたいものだ、と思います。