当クリニックには内診台を設置しておりません。いわゆる産婦人科の診察が必要だと考えられる病状・病態の場合は、他の診療所ないし病院の受診をご紹介いたしますし、子宮癌検診なども他の施設での受診をお薦めいたします。

産婦人科の外来診療を長年やってきましたが、内科や耳鼻科に受診されても症状が改善されない方が私のところに受診され、症状が軽減・改善された方も沢山おられます。

更年期の症状のみならず、月経困難症や月経前症候群などもそうですが、昨今は、ホルモン剤による治療(ホルモン補充療法や低容量ピルの使用)が主流になっています。

いずれの状況・病態であってもホルモン剤が使いづらい時、あるいはホルモン剤を使用しているけれど症状が残存する時、などに漢方薬が有効なことがあります。

月経に関連するその他の不調や、一部の頭痛、不眠などにも対応できる場合がありますので、一度お気軽にご相談くださいませ。

更年期障害

漢方的なものの言い方をすると、女性は七の倍数で身体が変わっていくと古い本には書いてあります。

だいたい14歳を目安として(最近は少し早くなりましたので、11−12歳ころの方が増えてきておられます)月経がはじまり、その後、49歳くらいを目処に月経が来なくなります。

この、月経が来なくなった状態を「閉経」と呼びます。現代日本人の平均は51歳ということだそうですので、昔の言い方から多少はずれたかしら?とは思いますが、大きくは変わっていないと言えるのでしょう。

閉経の前後5年ずつを「更年期」と呼びますが、この時期にさまざまな体調不良が出現することがあります。これが生活に支障をきたすようになると、「更年期障害」と呼びます。

更年期障害とされる症状としては、典型的なものは「(顔や頭に)汗をかきやすい」とか「急にのぼせる」などのホットフラッシュが有名です。他には「疲れやすい」とか「倦怠感」などの全身症状が多い印象です。さらに「気分が落ち込みやすい」あるいは「(手足の)関節が痛む」などの症状も場合によっては更年期障害として扱われることがあります。

もちろん、年齢的に内科的な疾患も増えてくる年頃にはなっておられますので、その症状の原因に内科的な疾患が無い、という確認をすることで診断をつける、いわゆる「除外診断」となります。

たとえば、甲状腺ホルモンの低下やうつ状態、変形性関節症やリウマチ性関節炎など、一見更年期障害と思われるような、似たような症状を引き起こす病状もありますので採血などによる評価が必要です。

更年期の時期は、それまで分泌していたエストロゲンが分泌されなくなる、という急激な変化が起きています。更年期障害の治療には、この急激に分泌量が減少したエストロゲンを補う、「ホルモン補充療法(HRT)」が有効と考えられます。実際ホルモン補充療法によって症状が改善する場合もけっこうありますが、更年期症状の全てに効果的というわけでもありません。

一般的には更年期症状とは、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が、この時期に急激に減少することに伴うものであると説明されていますが、更年期障害の強さと、その方の今までの生活を調査してみると、出産や育児などの時期に大変なエピソードがあった方では、更年期障害が強くなりやすい、ということが知られています。これは、妊娠・出産や育児において、無理をされたり、すごく頑張っておられたりしたことの影響というか、反動というようなものが、この時期、エストロゲンの分泌が減少することで、抑えが効かなくなって噴出するのだ、と言うことができるかもしれません。

それぞれの症状を読み解きながら、漢方薬などを用いて、ご自身のあり方に焦点をあてた診療が有効であると考えています。

月経困難症

月経の時にお腹や腰、あるいは頭が痛くなったり、その他の体調不良が出てきたりする状態を月経困難症と呼びます。

月経困難症には子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症と呼ばれるような器質的な疾患がある場合と、そういった病的な状態は認められないのだけれど、症状だけは認められるという機能的な月経困難症とに分類されます。

器質的な疾患がある場合には、それらの治療を優先することもありますので、一度、産婦人科の診察をきちんと受けて頂くことをお願いしております。

その上で、器質的な疾患はあるけれど、今は積極的な治療を行わないという方針の方、あるいはホルモン治療中の方、そして、器質的な疾患はなさそうだという方については症状に対して鎮痛剤を用いるとか、貧血に対して鉄剤を用いる「対症療法」が一般的です。しかし、ここに漢方薬を用いたり、あるいは生活の改善をしたりすることで、月経困難症が軽快・軽減する場合があります。場合によっては過多月経なども改善することがありますのでご相談ください。

月経前症候群(PMS)

月経前になるとむくみやすくなる、感情が不安定になる、あるいは過食ぎみになる、眠たくなる…などの変調を経験された方は少なくないと思いますが、この症状が生活に支障をきたすほど強くなってきた場合、それを月経前症候群(PMS)と診断することがあります。

月経前症候群(PMS)は、月経周期のうち、排卵後から月経までの「黄体期」にプロゲステロンが分泌される、いわゆる生理的なホルモンの変動に伴って症状が出現してくることが知られています。いわゆるホルモンバランスとしてはきわめて生理的…つまり異常は無いと言える状態なのですが、こうした症状が強く出る方の多くが、平常時(黄体期以外のタイミング)に身体に無理がかかっておられる印象があります。

月経前症候群(PMS)の治療では、「低用量ピル」や「ブロゲスチン製剤」などを用いて、内因性のホルモンの変動をおさえること、と、体調を整えることで、そのホルモン変動に振り回されない体質を作っていくことの二本柱が大事になります。

また、ピルやホルモン剤が、もろもろの理由で内服できない方についても、漢方薬や生活改善により症状が軽減することがあります。

私が月経前症候群(PMS)の診療をそれなりに積み重ねてきた印象としては、月経前症候群(PMS)というのは、「いきなりやってくるとてつもなく理解不能で異常な状態」ではなく、むしろ、普段からの頑張りすぎや、無理が蓄積している方の中で「一時的にエストロゲンの支配が緩むことで素の状態が出てくるタイミング」ではないかと考えています。

つまり、女性ホルモンであるエストロゲンが分泌されていることで、ずいぶんと無理ができる、というのが前提にあるのですが(これは更年期も似たような話になります。それまで無理ができるようになっていたのはエストロゲンが分泌されていたからなのだろうと思いますが、更年期になると急にエストロゲンが減りますので)この状態を「当たり前」と思ったりして無理を積み重ね続けると、やはりどこかで破綻します。

月経周期というのは、身体にかかる無理の過剰な蓄積による破綻をさせないために、いったん「緩む」場所を作っている安全弁のようなものなのではないかと思います。

こういうお話をすると、たいていの月経前症候群(PMS)の方が同じような返事をされます。「いやいや。私の頑張りなんて、ほんとうにたいしたことがなくて」とか「私はそんなに無理していないんですけれど」とか。

そういう、頑張りの基準がすごく高いところにある方が本当に多いです。 もうちょっとご自身の頑張りを認めて「無理していたんだね。」って身体をいたわってあげて欲しいのだけれどなぁ…。と、いつも思っています。

頭痛

西洋医学において、急激な頭痛と胸痛は、それぞれ脳卒中や心筋梗塞など致命的な異常を示す大事な症状です。
このような症状があった場合には、なるべく早くにきちんと検査ができる医療機関で相談していただくことをお薦めしています。

ところが、西洋医学ではどうにもよくわからない頭痛というのも結構あるようです。

頭痛にもいろいろありますが、生命にはさほど心配のいらない、けれどしばしばある頭痛としては、「筋緊張性頭痛」というのがあります。これはいわゆる肩こりや首のこりが痛みの原因となっている場合です。

また、痛みの前兆として、目の奥がキラキラしたりモヤモヤしたりという症状があった後で、拍動するような頭痛の場合には「片頭痛」である場合が多いようです。

片頭痛の病態は血管の拡張と血流量の急激な増加が挙げられており、前兆がみられた段階で、発作治療薬を内服することで、血管の拡張が予防され、頭痛が軽減することが知られています。

筋緊張性頭痛の理由としては「肩こり」にあわせて「眼の使いすぎ(眼精疲労)」とか「歯ぎしり」あるいは「歯の食いしばり」などがある場合があります。それぞれ、痛む部位の筋肉が緊張していることが触診でわかります。この緊張している筋肉を揉んで柔らかい状態にすることで、痛みの程度がやわらいだり、痛みの頻度が減ったりすることがあります。

漢方薬の中では、呉茱萸湯というのが頭痛の一部に極めて有効であるという報告がでていますし、雨天や低気圧などによる体調不良(気象病)の頭痛の場合には五苓散や苓桂朮甘湯が有効である場合もあります。 病状と体質によって処方がかわりますのでお困りの方はご相談くださいませ。

不眠症

不眠症とは「眠るまで時間がかかる」という形の「入眠障害」、「途中で目が覚める」という形の「中途覚醒」そして「起きる予定の時間よりも早く目が覚めてしまって眠れない」という「早朝覚醒」という三つの症状のいずれか、あるいはこの組合せで症状がある状態を言います。

カフェインの摂取は、眠りを浅くして中途覚醒を引き起こすこともありますので、夜に眠れない感じがある場合には「午後のカフェインの摂取をやめてみる」というのも一つの方法です。カフェインの半減期は人によって異なるようですが、長い場合には8時間とも言われています。完全にカフェインの影響を抜くとするなら、だいたい2週間ほど、カフェイン無しの生活を送って頂くことをお薦めしています。

カフェインの影響にもつながりますが、頭の緊張が続いていると眠れないことはしばしばあります。これは温灸や指圧などでも解消できることがありますし、蒸しタオルを後頭部に当てて温めることで解消できる場合もあります(蒸しタオルなどの特定の刺激は、毎日続けていると慣れてしまって効かなくなることがありますので適宜間隔をあけてください)。

頭の緊張には、頭の中で考えごとがずっと続いている、という場合にもしばしば起こります。考えごとは、人によっても異なりますが、たとえば、仕事のこと、あるいは悩みごと、明日起きたら忘れないうちにやるべきことなどなど。

こうした考えを継続した状態で眠ると、頭がきっちり休みに入れないことがあります。気になること、忘れては困ること、などは寝る前、あるいは夕方の段階で書き出しておくと、頭にかかる負担が軽減して眠りやすくなります。

漢方的な診療をしていると、睡眠不足によって「血(身体の中に栄養を巡らせる働きと成分)」が足りなくなっておられる方もしばしば見受けられますし、漢方ではなくても、睡眠不足が続くことによって、肥満が解消しないとか、血圧が上昇するなどの悪影響があることが知られています。

漢方薬の中には、神経がたかぶって眠れなくなっている状態に効く処方もありますし、消耗しすぎている「血」を補うことで眠りやすくする処方もあります。

不眠の症状それぞれに応じて対処法や処方を調整しますのでご相談くださいませ。